3Dモデリング入門01 ビューとワークベンチの種類と切替え モデリングのフロー

 FreeCADを使って3Dモデリングを始める前に、FreeCADについて少しだけ説明します。

 FreeCADはソリッドモデルを作成するパラメトリックモデラーです。パラメトリックとはモデル作成後に途中の操作の変数を変更して最終形状を変形することができるということです。できあがったモデルを自由に変形できるので、モデルの変更が簡単になります。

 操作方法に関しては、FreeCADは、ワークベンチというツール群を、目的に応じて切り替えながら使用します。一般的なCADでは、画面に2D、3Dのツールが並んでいるか、最低でもプルダウンメニューでツールを表示できるようになっているので、アイコンを見れば適当に操作することができます。
 しかし、FreeCADの場合は、使いたいツールがあるワークベンチに移動して操作しなければいけないので、ワークベンチの構成を理解し操作するには少し手間がかかります。

 その他に、3Dモデリングをするためには、ビューと作業平面を理解することが必要です。ビューとはモデルを見る方向です。3Dモデルは、前後上下左右でモデルの見え方が違います。立体的に見るために斜め方向から見ることもあります。見る方向を変えることで、モデルの形状を把握し、編集を容易にするのがビューの役割りです。
 ビューの方向は、ツールバーで変更できますが、テンキーの0から6とHomeキーで変更することもできます。
 マウスの中ボタンと右または左ボタンを同時に押して、マウスをドラッグすると、作業画面の表示を回転することができます。


 また、3D空間で作図したり、モデルを移動する時に、画面上でカーソルを自由に動かすと画面奥行方向で想定外のポイントを拾ってしまう可能性があります。これを防ぐためには、作図や編集をする面を決定する作業平面という機能を使います。XYZ軸に平行な面や、モデルの任意の面を作業平面に設定することで、想定外の空間に作図することがないようにコントロールします。


■ビューとワークベンチの種類と切替え
 FreeCADは、多機能な3DCADで、ワークベンチは種類が多いため、3Dモデリングに慣れていないと、どれを使用すればよいのかわからないという問題があります。


 一般的なモデリングのためには、PartワークベンチまたはPartDesignワークベンチを使います。
Partワークベンチは、従来のようにソリッドを作成しブーリアン演算で合成するモデリングツール群です。
PartDesignワークベンチは、FreeCADの先進的なモデリングツール群です。ツールでモデルを直接加工しながら最終形状を構築します。

 建築のモデリングをするならBIMワークベンチを使うのが最適です。(BIMワークベンチはPartワークベンチを含んでいます。)

FreeCADで作成したモデルはパラメトリックなので、どのワークベンチを使用してもパラメトリックな変形は可能です。

 これから、PartワークベンチとPartDesignワークベンチの操作方法を練習します。3Dモデルは、2D図形から作成するのが一般的なので、2Dオブジェクトを作成するためのDraftワークベンチとSketcherワークベンチの操作方法を先に練習します。

 その他にも、自由曲面や、メッシュ、点群、地形図データを操作するためのワークベンチもありますが、今回の説明には含んでいません。必要になったときには別のシリーズで検討することにします。

 Draftワークベンチの基本的な使い方は、このブログのBIM入門の入門ガイド2.12.2に記載しています。Partワークベンチのツールについては、入門ガイド3.13.2に記載しています。重複する部分は省略することもあります。PartワークベンチとDraftワークベンチのツールの使い方がわからない場合は、そちらの説明も見てください。



 FreeCADをインストールしたときは、Startワークベンチになっているので、モデリングツールは表示されません。

■ワークベンチを切替える
1)ツールバーの中のワークベンチ名の部分(Startの部分:ワークベンチセレクター)をクリックすると、プルダウンメニューで利用可能なワークベンチのリストが出ます。
2)使用するワークベンチを選択します。

・登録されていない外部ワークベンチはメニューバーのツール>アドオンマネージャーでインストールできます。

(建築モデルで使いたい場合は、ここで、BIMワークベンチをインストールしてください。操作方法は、BIMを選択し、選択をインストールするボタンをクリックするだけです。)



■プルダウンメニューのリストを並べ替える
 メニューバーのツール>カスタマイズ>ワークベンチでリストを並べ替えることができます。
 v0.21では、編集メニュー>設定>ワークベンチで表示されるリスト内でドラッグすることで並べ替えが可能です。

ワークベンチを選択し、右の矢印で上下に移動します。
左の矢印で使わないワークベンチを無効にすることもできます。

・メニューバーの表示>ワークベンチで、並べ替えたリストを見ることができます。ここでワークベンチを選択して使用するワークベンチを変更することもできます。

・ワークベンチ名の右にW,1のように表示されているのがショートカットです。
 キーボードからWnと打てば、セレクターを使わずにワークベンチを移動することができます。
・ワークベンチを移動する最も速い方法なので、よく使うワークベンチを1から9に配置しておけば、移動が簡単になります。






■主要なモデリングツール
 3Dのモデル(オブジェクト)を作成するために使用するワークベンチは次のものです。

  • ワークベンチPart.svgPartワークベンチ:初期の3DCADシステムから採用されている従来の方法。
    プリミティブまたは押出しにより作成したソリッドを、ブーリアン演算(ユニオンおよびカット)で合成して、
    より複雑な形状を構築します。

  • Workbench PartDesign.svgPartDesignワークベンチ:FreeCADの先進的なモデリング方法。
    ボディオブジェクトの中で、プリミティブまたは加算減算オブジェクトの作成を繰り返し、操作を累積した単一の最終的オブジェクトを構築します。加算減算オブジェクトは作成した形状を、もとの形状に自動的に合成します。

  • Workbench Arch.svgArchワークベンチ:建築オブジェクト(BIMオブジェクト)を作成する 。外部ワークベンチのIFC.svgBIMワークベンチに含まれているので、BIMワークベンチで使用します。
    BIMワークベンチは、DraftワークベンチのツールとPartワークベンチの主要なツールなども含む複合的なワークベンチです。

       3Dオブジェクトは、2Dオブジェクトをベースにして押出しで作成するので、2Dオブジェクトを作図する機能が必要です。PartやPartDesignには2D作図編集機能がないので、DraftワークベンチまたはSketcherワークベンチで2D図形を作成します。

      • Workbench Draft.svgDraftワークベンチ:基本的な2DCAD作図編集ツール。数値入力により形状を直接作成することもできます。制約は使えないが、オブジェクトのプロパティを変更することで位置や寸法を変更することはできます。

      • Workbench Sketcher.svgSketcherワークベンチ:2D図形を作図し制約(拘束)を適用してSketchオブジェクトを作成します。制約で位置や形状を定義して固定することで、Draftよりも自由な変形や、他の図形に連動した変形が可能になります。


       基本的に、ワークベンチ( Draft、Sketcher、PartDesignなど)のすべての2Dおよび3D描画関数は、Partワークベンチによって公開される関数に基づいています。
       PartワークベンチはFreeCADのモデリング機能のコアコンポーネントなので、どのワークベンチで作成したオブジェクトでも、Partワークベンチのツールで操作することができます。



      2Dベースオブジェクトを押出しで立体化して3D形状を作成する概略のフローは次のようになります。

      ■Partワークベンチの3Dモデリング
      1)DraftまたはSketcherでベースとなる2D形状を作成します。
      2)押出し(Extrude)等で立体化して、3D形状を作成します。
      3)1と2の操作を繰り返して、合成する形状を作成します。
      4)2と3で作成した形状を、ブーリアン演算で合成(ユニオン、カット)します。
      5)この操作を繰り返して、複雑な形状を構築します。

      ・Partワークベンチで追加する3D形状は、もとの形状と分離していても作成できます。
      ・Partワークベンチで作成した形状は重なっていても、ブーリアン演算で合成するまでは、別々のオブジェクトです。
      ・複数のオブジェクトを並行して作成することができます。分離した形状をまとめて操作することもできます。

      ■PartDesignワークベンチの3Dモデリング
       PartDesignワークベンチのモデリングは、実際の機械部品製作をイメージしています。材料を準備し、削ったり追加したりしながら部品の形を整えていく工程と同じです。

      1)ボディを作成します。
      2)SketcherでベースとなるSketch(2Dオブジェクト)を作成します。
      3)加算ツールで、Sketchを3D形状に変換して、最初の形状を作成します。
      4)作業平面または3D形状の面を選択し、Sketcherで面上に2Dオブジェクトを作成します。
      5)加算減算ツールで、もとの3D形状を加工変形します。
       (2Dオブジェクトを立体化したものを、ブーリアン演算で合成する操作がユニット化されていると考えることもできます。)
      6)4と5の操作を繰り返して、最終的な形状を構築します。

      ・PartDesignワークベンチのツールで操作できるのは、ボディ内にあるオブジェクトに限定されています。
      ・PartDesignワークベンチで作成した形状は、自動的にもとの形状と合成されて単一のオブジェクトになります。
      ・したがって、PartDesignワークベンチで追加削除する3D形状は、もとの形状と連続する位置関係にないと作成できません。
      ・別のボディを作成すれば、分離した3D形状を作成することができますが、別々のボディにあるオブジェクトをまとめて操作することはできません。
      ・PartDesignワークベンチで作成した形状を、それ以外ワークベンチのツールで操作すると、ボディの外に形状が作成されるので、PartDesignワークベンチのツールで操作できなくなります。


       PartとPartDesignは、操作方法やデータ構造に慣れるまでは混合しないことが、技術ドキュメントでも推奨されています。ここからの説明では、比較のためにそれぞれの操作方法を並べて記載していますが、最初はどちらかのワークベンチに決めて練習するのが効率的です。

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