入門ガイド2.1 Draft 作図ツールの基本的な操作とオブジェクト選択の種類

3DCAD初心者のためのFreeCAD-BIM入門ガイド

S.2 2D作図機能 
 BIMモデリングは、3Dの柱、梁、壁などの部品を使って建物を組み立てていくことで、これまでの3Dモデリングに比べて、非常に簡単に建物モデルを作成することができるようになっています。
 標準の部品を使っている限り、モデリングをするというよりも部品を配置しているようなものなので、2D作図機能や3Dモデリング機能はそれほど使うことはありません。
 実際、市販のBIMソフトRevitのトレーニングマニュアルを見ると、通り芯に柱を配置するところから始まっていて、3Dモデルの作り方などは出てきません。3Dモデリングは特殊な部品を作るための操作に限られているからです。

 BIMツールだけですべてモデリングできるなら3Dモデリングを使う必要はありませんが、規格外の部材や部材の取り合いの細かい部分を作成するためには、標準のツールでは対応できない部分も多くあります。
 特にFreeCADでは、3DCADの機能を使ってBIM機能を実現しているので、ツールや部品の数が少なく、足りない部分は3Dモデリング機能を使って自分で追加していくことになります。
 つまり、BIMを使うためには3Dモデリングも理解する必要があり、そのためには2D作図機能も知っておくことが必要となります。BIM、3D、2Dの順で説明すると、説明が前後してしまうので、基礎的な部分から2D、3D、BIMの順で理解していくのが自然な流れです。


 2D作図機能は、3Dモデルのベースオブジェクトを作図したり、編集のためのガイドラインを作成するために必要な機能です。

 FreeCADには2Dの図形を作図するために、DraftワークベンチとSketcherワークベンチという2つのワークベンチがあります。
 Draftワークベンチは一般的な2D作図ツール、Sketcherは3DオブジェクトのベースラインとなるSketchという特殊な2Dオブジェクトを作成するツールです。


■Draftワークベンチの作図機能
 BIMワークベンチの2D作図機能は、Draftワークベンチの機能と同じものです。

 FreeCADは2DCADではないので、Draftワークベンチの2D作図ツールは3Dモデルのベースオブジェクトを作成するのに最低限必要な機能に絞られています。編集ツールもそろっていますが、少し使いづらいところがあります。

2Dの詳細な作図が必要な設計図作成は、専用の製図ソフトを使うことが推奨されています。

■線、四角形、円などを作図する

アイコンを見ると形状は想像できるので細かく説明はしませんが、作図するときには作業平面を決め(Autoは不可)、WPスナップをONにしてから始めます。

線、多角形、円を描くツールは一般的な2DCADと同じです。
1. ツールをクリックするとタスクタブが座標入力のオプションに変わります。
2. ツールを連続して使う場合は□続行をONにします。
3. 最初のポイントから順に画面上でクリックするか、座標入力でも作図できます。
4. 必要な数のポイントが指定できたら、図形が完成します。
  • 直線の場合は、始点終点のほか、角度と長さでも入力できます。
  • 円弧や曲線はいくつか種類がありますが、画面上でクリックすればガイドラインがでるのでそれを見ながら作図します。
  • 閉じた線形は、□塗りつぶしをONにすると面(Face)になり、OFFは輪郭線(Wire)になります。
    (アップグレード、ダウングレードというツールを使うと変換できるので、気にしないで作図し、後で変換した方が簡単です。)
  • 点を正確に合わせるには、スナップを使います。


■作図例(線を描く)
1. Lineツールをクリックすると、タスクタブが座標入力のオプションに変わります。

同じツールで連続して作図したい場合は、下段の□続行をONにします。

2. 始点(Point1)をスナップまたは座標で指定します。

3.ガイドのラインを見ながら、終点(Point2)を指定します。
スナップで位置を決めてクリックします。

座標で指定する場合は、下段の□相対がONになっていることを確認して、Point1からの移動量を入力します。



他の図形ツールでも、オプションが表示されます。ツールによって座標を入力する場合と、寸法を入力する場合があります。

閉じた図形を作図できるツールは、□塗りつぶしをONにすると面(Face)になります。



■オブジェクトの選択
 オブジェクトを編集するには、まずオブジェクトを選択します。オブジェクトを選択すると、作業ビューでその線や面がハイライト(標準では明るい緑色)表示されます。

 オブジェクトの選択方法は、2DCADと同じように作業ウインドウでオブジェクトをクリックする方法と、画面で選択範囲を指定して選択する方法があります。
 FreeCADでは、この他にモデルタブにデータ構造が表示されているので、この中から必要なオブジェクトをクリックして選択することもできます。

1. オブジェクトをクリックする方法
 画面上の図形またはオブジェクトをクリックすると、クリックした要素(線または面)だけがハイライト表示されます。もう一度クリックするとオブジェクト全体がハイライト表示されます。
 この時注意しなければいけないのは、面だけがハイライト表示になっても、面が選択されているのではなく、オブジェクト全体が選択されていることです。モデルタブを見るとどちらの場合でもオブジェクトが選択されています。
 
 それでも、この2段階の表示が役に立つのは、面に作業平面を移動する場合や、Facebinderツールでオブジェクトから面を抽出する場合などに、特別に面を指定する必要があるからです。

 作業ウインドウで選択したい線や点が、面に隠れて見えないことがあります。その場合は表示スタイルをワイヤーフレームに変更すると面が消えるので、後ろの線を選択することができます。
(ショートカットキーでv3と押せばワイヤーフレームになり、v1で戻ります。)


2. 範囲指定で選択する方法
 マウスをドラッグして範囲を指定し、オブジェクトを選択する方法は2つのツールがあります。(メニューバー編集のプルダウンメニューの中にあります。)

ボックス選択(Shift+Bキーで呼出し)は、選択範囲でオブジェクトを選択します。
 2DCADの範囲選択とほぼ同様の動作をします。
 左から右へボックス範囲指定すると、ボックス内に完全に含まれたオブジェクト
 右から左は、ボックスに触れているオブジェクト

ボックス要素選択(Shift+Eキーで呼出し)は、選択範囲でオブジェクトの面(Face)を選択します。
 左から右へボックス範囲指定すると、ボックス内に完全に含まれた面
 右から左は、ボックスに触れている面

3DCADで範囲選択を使う時は、面の後ろに隠れているオブジェクトがないか注意することが必要です。2Dの場合は、見えているオブジェクトがすべてですが、3Dは奥行方向にものがあっても面で隠れれば見えませんが、範囲選択ではこれも拾ってしまいます。

モデルが複雑になり、3Dビューでうまく範囲選択できないときは、上面、正面などの比較的わかりやすいビューに切り替えてから範囲選択するのもひとつの方法です。

ボックス選択とボックス要素選択は、3Dオブジェクトに対しては有効ですが、Draftワークベンチの2Dオブジェクトは線または面なので、どちらも同じ動作になります。


実際には、FreeCADではモデルタブで直接オブジェクトを選択できるので、この範囲選択を使うことはほとんどありません。複数のオブジェクトを選択するならモデルタブを使う方が簡単です。


3. モデルタブでオブジェクトを直接選択する方法
 モデルタブには、作業ウインドウで非表示になっているオブジェクトを含めてすべてのオブジェクトがリストアップされているので、この中からオブジェクトを選択するのが最も確実な選択方法です。
 ShiftキーやCtrlキーを使って複数選択できることは、Windowsソフトの共通の操作方法です。
 モデルタブでオブジェクトを選択すると、作業ウインドウでハイライト表示に変わるので、画面を確認しながら選択すれば間違えることはありません。


 オブジェクトをひとつだけ選択すれば、ビュータブ、データタブにオブジェクトのプロパティが表示されます。複数のオブジェクトを選択すると、共通するプロパティだけの表示になります。


■モデルタブでオブジェクトを選択する時に注意すること
 FreeCADのデータは階層構造になっているので、上層のオブジェクトを選択すると、下層のオブジェクトは自動的に選択されます。データを展開して最下層まで表示しなくてもよいので便利な機能ですが、コピーするときに必要のないものまでコピーしてしまうことがあります。

特にグループ化したオブジェクトや、合成した建築オブジェクトは、最上層のオブジェクトを選択して複写するとデータが崩れます。
データを展開して下層のオブジェクトを選択して操作する方が失敗が少ないようです。

その他に、オブジェクトを選択して、Ctrl+Cでコピー&ペーストする場合は、選択したオブジェクトと関連するオブジェクトの一覧が表示されるので、コピーするオブジェクトを識別することが必要になることもあります。

オブジェクトの選択と編集は、実際に試してみないとわからないことが多いので、すべてを説明することはできません。

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