図面作成とモデリング(1)RC造の躯体を結合する(平面図・断面図)

 BIMを試してみたが、モデルを完成することができないので実務に使えない。詳細なモデルを作成するには手間がかかりすぎて時間が足りない。そんな理由でBIMの導入をためらっているなら、図面作成についてBIMを補助的に利用することから始めてみてはどうだろうか。
 BIMで実務レベルの詳細なモデルを作成するには3DCADの操作も必要になり、3Dの初心者には難しいが、目的を図面作成に限定して、BIMが効率的な部分はBIMで、BIMで難しい部分はCADで作図することにすれば、時間と労力をかけて苦しい思いをすることはなくなる。

 BIMを図面作成に使うメリットは、モデルから図面を自動生成することによる作図時間の短縮と、図面が連携していることによる修正の容易さであるが、モデル作成に時間がかかると作図作業の効率化という結果にはつながらない。
 したがって、BIMモデルを作成する時は、必要な情報に応じてどこまで作るか(詳細度)を考えることが重要である。

ここからは、標準的なツールで図面作成に必要なモデルを作成する方法を検討する。
実務でBIMを部分的にでも使うことができれば、少しずつBIMに慣れて他の活用方法が見つかるかもしれない。


■■■ RC造の場合 平面図・断面図を作成する ■■■

■主要構造部を作成し、輪郭線で作図する
BIMで作成した図面をCADで利用する最も初歩的な方法は、構造体と間仕切り壁、壁開口までBIMで作成し、その他の部品はCADで追加していくことである。

これだけでも平面断面立面図を個別に作成するより効率的であるし、構造部材や壁位置が変更になった時にも修正が容易になるので、前回までに作成したモデルでも図面作成に利用できる。

企画の説明などで使うだけなら前回までの記事で作成した図面のままでもよいが、構造体の接続部が処理されていないので、もう少し手を入れて、図面らしく調整する。詳細な図面を作成するために最も基本的な部分である。

前回で作成した2D図面を拡大すると、柱や壁が別々の部材になっているため、構造体として一体になる接続部分が結合していない。
このままで図面として利用すれば、2DCADで接続部を処理することが必要になるので、BIMデータの中でできるだけ結合部を処理しておきたい。
Revitなどでは、接続部を処理する機能があり、構造体や仕上材を区別して接続部を自動で結合してくれるが、FreeCADでは、壁の自動接続以外に自動処理の機能はないので、追加(結合)ツールで合成する必要がある。



FreeCADで建築オブジェクトを結合するには、 コンポーネントの追加ツールを使用する。
ブーリアン演算の 結合(Fusion)でも、オブジェクトを結合することはできるが、建築オブジェクトのプロパティを維持したまま結合することはできない。

 コンポーネントの追加ツールで結合する方法は次のようになる。
1)追加(結合)する建築オブジェクト(複数も可)を選択し、最後に追加される(結合元になる)建築オブジェクトを選択する。
2) コンポーネントの追加ツールをクリックする。
3)追加するオブジェクトが最後に選択した元になるオブジェクトに結合し、下層にコピーされる。
 この時、建築オブジェクト以外のものを選択すると結合されない。

例えば壁オブジェクトをまとめて選択し、 コンポーネントの追加ツールをクリックすると、最後に選択した壁オブジェクトの下層に、それ以外の壁オブジェクトがコピーされて結合が完成する。
どれかひとつの壁の下層に他の壁が入る構成になり、モデルタブでの見通しがよくない。

これを避けるために、壁オブジェクトをひとつだけ選択し、 柱ツールをクリックして、構造体という名前のオブジェクトを作る。(下層に壁オブジェクトが移動する)
この作成された構造体オブジェクトに壁や柱などの建築オブジェクトを追加していく。

作成された構造体オブジェクトは、建築オブジェクトを入れるためのもので、具体的なモデルに対応していないが、建築オブジェクトなので コンポーネントの追加ツールを使うことができる。

(オブジェクトを選択し、 柱ツール 壁ツールをクリックして構造体オブジェクトに変換する操作は、Solidを建築オブジェクトに変換するときに使う操作である。)


1Fコンクリート部分を結合する
1Fのコンクリート部分を一体化するために、1fW内のコンクリート壁と1fCの柱を結合する。



1fWグループ内の壁オブジェクトを選択する。


を選択した状態で、 柱ツールをクリックすると、構造体オブジェクトができる。
構造体の下層にコピーされる。



構造体のIfcTypeプロパティは、柱(Column)ではなく、Building Element Proxyになっている。




構造体を選択し、Labelで名前を構造体1FRCに変更する。






壁001から004までを選択する。
















最後に、Ctrlキーを押しながら、構造体1FRCを選択して追加する。

 コンポーネントの追加ツールをクリックすると、壁001から004は構造体1FRCの下層にコピーされる。


柱オブジェクトも構造体1FRCと結合する。
1fCの ColumnからColumn03までを選択する。



最後に構造体1FRCを選択する。







 コンポーネントの追加ツールをクリックすると、ColumnからColumn003は構造体1FRCの下層にコピーされる。





以上の操作で、壁から壁004、ColumnからColumn003までが結合される。








1Fボード壁はグループにまとめる
1fW内の他の壁は、軽鉄下地ボード壁なので、ひとつのグループにまとめておく。

壁005から008を選択し、右クリックして、Move to group、最下段の+Add new groupをクリックする。
(  グループの作成ツールでグループを作成し、ドラッグで下層に移動してもよい。)








グループ名を1FWLSとしてOKで戻る。1FWLSができて、壁005から008が1FWLSの下層に移動する。


1Fupの下の1F廊下壁031、1F住戸境、1Fバルコニー手摺1FWLSに移動する。

まとめて選択し、右クリックして、Move to group、最下段の+Add new groupをクリックする。




リストの中の1FWLSをクリックすると、1FWLSの下層に移動する。






1FL以下のコンクリート部分を結合する
 1FLグループ内には、壁オブジェクトがないので、柱ツールで構造体を作成することができない。
(柱、梁、床オブジェクトを柱ツールでクリックすると、柱のオプションが開くだけで構造体はできない。)

bfC内のColumn004を選択し、 壁ツールをクリックする。

Wallオブジェクトができる。


IfcTypeは、Wallとなっているので、構造体と同じBuilding Element Proxyに変更する。





WallのLabelで名前をBFRCに変更する。






bfCのColumn005から007、1fGの母屋材006から011までまとめて選択し、最後にBFRCを選択する。




 コンポーネントの追加ツールをクリックすると、bfCの柱と1fGの母屋材が結合されて、BFRCの下層にコピーされる。



1fS内のSlabからSlab002までを選択し、最後にBFRCを選択する。

 コンポーネントの追加ツールをクリックして、床をBFRCに結合する。


1fS内のExtrudeは床のかさ上げで、RCではないので、結合しない。

1FバルコニーExtrude006はRCと考えているので、結合したいが、Extrudeは建築オブジェクトではないので、結合できない。

1FバルコニーExtrude006を選択し、 スラブツールをクリックすると、Slab009ができる。
下層に1FバルコニーExtrudeが移動して、建築オブジェクトになる。
Slab009のIfcTypeはSlabになっている。


Slab009を選択し、さらにBFRCを選択して、 コンポーネントの追加ツールをクリックする
Slab009がBFRCの下層に移動して結合される。













以上で1F部分の平面図に必要なRC部分の結合ができたので、ページにViewを作成して確認する。

WPセレクターで上面に移動する。
3Dビューは上面図ビューに移動する。

Pageオブジェクトの中にあるビューを削除し、templateだけにする。
モデルタブですべてのオブジェクトを非表示にする。

kaidan、1FCAD Compound、構造体1FRC、1FWLS、BFRCを選択して、表示にする。

選択したまま、 断面ツールをクリックして、セクションオブジェクトをつくる。

セクションを選択し、OnlySolidsプロパティをfalseに変更する。


セクションを選択し、  シェイプ 2D ビューをクリックする。
モデルタブにShape2DViewができる。


モデルタブでPageをダブルクリックしてPageを開く。
TechDrawワークベンチに移動する。

Shape2DViewを選択し、2020年11月27日 09:09時点のバージョンのサムネイル ビューの挿入Viewを作成する。


ビューを選択し、 ビュー フレームのON/OFFツールをクリックする。

図の頂点の表示(黒丸)がON/OFFできるので、RC部分が結合処理されていることが確認できる。


次の操作練習のために、Shape2DView、セクション、Page内のViewは削除する。



■断面図のために2FLを結合する
断面図の練習として、1階部分の断面を作成してみる。

BIMワークベンチに移動する。
断面図を作成した時に、2FLのコンクリート部分が1FRCと接続処理できるように、2FLの部材を結合する。

2FLだけを表示にする。

2fG内の母屋材を選択し、 壁ツールをクリックする。

Wallができて、母屋材が下層にコピーされる。


Wallを選択し、IfcTypeをBuilding Element Proxyに変更する。

Labelで名前を2FRCに変更する。
2fG内の母屋材001から005まで選択し、最後に2FRCを選択して、 コンポーネントの追加ツールをクリックする。






さらに、2fS内のSlab003から005を選択し、最後に2FRCを選択して、 コンポーネントの追加ツールをクリックする。




2FバルコニーExtrude007は、1Fと同じように建築オブジェクトに変換してから結合する。

2FバルコニーExtrude007を選択し、 スラブツールをクリックすると、Slab010ができる。
下層に2FバルコニーExtrude007が移動して、建築オブジェクトになる。
Slab010のIfcTypeはSlabになる。
以上で、2FRCに2F床梁、スラブ、バルコニースラブが結合される。








2FRCを選択し、さらに構造体1FRCを選択して、 コンポーネントの追加ツールをクリックする。
構造体1FRCの下層に2FRCが移動して結合される。










■平面図・断面図を作成する
WPセレクターで作業平面が上面になっていることを確認する。

平面図を作成するために、kaidan、構造体1FRC、1FWLS、BFRCを選択する。

 断面ツールをクリックして、セクションを作成する。
作業平面(上面)と平行にセクション(水平断面)ができる。





セクションを選択し、  シェイプ 2D ビューをクリックする。
モデルタブにShape2DViewができる。


Shape2DViewは、作業平面(上面)にできたように見えるが、実際はXY平面上にできている。
(次の垂直断面の時にわかる。)





WPセレクターで作業平面を側面に変更する。

kaidan、構造体1FRC、1FWLS、BFRCを選択する。

 断面ツールをクリックして、セクション001を作成する。



作業平面(側面)と平行にセクション001(垂直断面)ができる。









セクション001を選択し、  シェイプ 2D ビューをクリックする。
モデルタブにShape2DView001ができる。


Shape2DView001は、作業平面(側面)ではなく、XY平面上にできている。







WPセレクターで作業平面を上面に変更する。

Shape2DView001を選択する。




Placementで回転の角度を90に変更して、平面図と図面の方向を合わせる。








上面図ビューに移動する。

TechDrawワークベンチに移動する。





Pageビューに移動する。
Shape2DViewを選択し、2020年11月27日 09:09時点のバージョンのサムネイル ビューの挿入Viewを作成する。

今回の操作では、1FCAD Compoundを選択していないので、3Dモデル部分だけの図面になっている。


Shape2DView001を選択し、2020年11月27日 09:09時点のバージョンのサムネイル ビューの挿入View001を作成する。

Viewをドラッグしてレイアウトする。

 ビュー フレームのON/OFFツールをクリックする。
図の頂点の表示(黒丸)がON/OFFできるので、RC部分が結合処理されていることが確認できる。


この状態でPageオブジェクトを選択し、  ページを DXF としてエクスポートツールをクリックすると、DXFで保存できる。
2DCADに読み込んで通り芯や、室名、寸法を記入して編集する。

今のところFreeCADでは寸法や文字をDXFに変換できないので、最終的な図面を2DCADでまとめるつもりなら、ページ上で文字や寸法を記入しても無駄な作業になる。

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