TechDrawワークベンチの使い方(4)BIMで作成した2D図面と2DCADの連携
BIMソフトは製図専用のソフトではないので、BIMだけで詳細な設計図を完成するのは難しいが、BIMとは関係なく別の2D設計図を作成していたのではBIMを使っている意味がない。
図面管理の面でも、モデルと連携した2D図面というBIMの特徴が損なわれてしまうのが最大の問題である。
将来的には、BIMの2D作図機能が充実し、図面作成に関しては専用の2DCADと同等の性能を持つことが理想的であるが、すぐにその機能が実装されるとは思えない。
■BIMと2DCADの連携
ここから紹介するBIMと2DCADの連携方法は、市販ソフトRevitのトレーニングマニュアルで紹介されている方法を実際に操作してみた結果を、FreeCADに応用する方法である。
Revitでも、FreeCADでも、BIMのデータを直接2DCADに受け渡しすることはできないので、2Dの中間ファイルを介して相互に調整していくことになる。
Revitでも、FreeCADでも、BIMのデータを直接2DCADに受け渡しすることはできないので、2Dの中間ファイルを介して相互に調整していくことになる。
基本的には、BIMの図面データを中間ファイルに書き出し、2DCADで読み込み、情報を追加して、追加情報をBIMに貼り付けることを繰り返す。
BIMデータを元に、2DCADで作業するので間違いが少なくなり、製図に関してはBIMよりも効率的な2DCADを使うことができるというメリットがある。
■FreeCADと2DCADで、データを連携する方法
RevitとAutoCADを連携する場合は、AutoCADには、DWGファイルの外部参照という機能があり、図面の読込みと合成を自動化できるので、図面の連携はかなり使いやすい。
同じことをFreeCADで操作するためには、もう少し複雑な操作が必要になる。
FreeCADではDWGファイルの読み込み書き出しができないので、DXFファイルを使う。
1)FreeCADでPageを作成し、図面ビューをレイアウトする。
2)Page(図面ビュー)をDXFファイルに保存する。
3)2DCADでDXFファイルを読み込む。
4)読み込んだDXFファイルを編集しないように(ブロック、ロック等で)固定する。
5)2DCADで図面に追加情報を記入する。(2D図面として利用してもよい。)
5)2DCADで図面に追加情報を記入する。(2D図面として利用してもよい。)
6)追加情報部分だけをDXFファイルに保存する。
・2DCADで作成するDXFは(2D)とする。(3D)のDXFデータはFreeCADでは読み込めないので(2D)に変換する必要がある。
・DXF(3D)とは、Z値に0以外が設定されているDXFデータなので、AutoCADの場合は線分のデータのZ値をすべて0にして、DXFを保存すれば、FreeCADでインポートできることもある。
・DXFを読込みできない場合は、DXFを(2D)で保存するCAD(例えばLibreCAD)に、DXFファイルを読み込み、そのまま(2D)DXFファイルとして上書き保存するのが最も簡単な方法である。
7)FreeCADにDXFファイルを読み込んで合成する。
・FreeCADにインポートしたDXFデータは、座標原点(0,0)がモデル空間の座標原点と一致するように挿入される。
・2DCADで作図する時に、座標原点を3Dモデルの座標原点と一致させておけば、平面の位置を調整する必要がなくなるが、読み込み後にFreeCADの移動ツールで操作してもよい。
・TechDrawのPageへのビューの挿入は、図形の中心を用紙の中心に合わせて配置する。
Pageでビューを正確に移動するのは難しいので、配置した時に自動的に位置合わせできるように考えておくことが必要である。
8)FreeCADまたは2Dの追加情報に変更があった場合は、これらの操作を繰り返す。
いずれにしても複雑な操作が必要になるので、BIMの標準機能でできるところまで3Dモデルを作成して2D図面に変換し、その図面を2DCADに読み込み、追加検討して詳細な図面を作成するのが現実的な方法である。
■DXFファイルの合成の練習
FreeCADで平面図を作成し、2DCADで設備機器や備品を配置する操作を説明する。
(2DCADはAutoCADを使用しているが、他のCADでも同様の操作ができる。)
■平面図のViewを作成する
図面レイアウトで使用した練習00モデリング例.FCStdを開く。
BIMワークベンチに移動する。
3Dビューが正面図になっていることを確認する。
テンプレートでページを挿入ツールをクリックしてPageを作成する。(A3)
Pageを選択し、プロパティでScaleを0.01(1/100)に変更する。
オプションで方向を水平下向き、Z=1500に変更して、OKをクリックして1階平面図を作成する。
(Section-)
同様にして、Z=4500に変更して、OKをクリックして2階平面図を作成する。
(Section-001)
2階平面図を選択し、プロパティでX=300、Y=150に変更して移動する。
保存ウインドウが開くので、名前を付けて保存する。
■2DCADで読み込み、編集する
保存したDXFファイルを2DCADで開くと、図枠の外の正面図も含めて変換されている。
逆に、図枠は変換されていないので、ページの図面範囲がわからない。
・FreeCADのDXF変換で保存される要素は、ソリッドのみ、2D要素は変換されない。
(テンプレートはSVGファイルなので、変換されない。)
・用紙サイズの左下が、DXFファイルの座標原点になる。
正面図ビューが VIEW
平面図が SECTIONVIEW...
縮尺が正しいか確認するために、柱間の寸法を計測する。
長さが72.000となっている。
FreeCADでPageをDXFに変換すると、Pageの縮尺に調整された図面になる。
(PageのScale=1/100なので、実長は7200が72となっている。)
JWWのように、最初からレイヤー番号が決まっている場合は、DXFファイルの読み込みで使用していないレイヤーに、追加情報を記入する。
用紙サイズと位置は、FreeCADのPageに貼り付ける基準になるので、正確に作図する。
(座標原点は、AutoCADの場合、0,0で絶対座標入力できるが、一般的なCADの場合はグリッドを表示した方がわかりやすいかもしれない。)
用紙範囲外の正面図は削除してもよい。
平面図部分を選択し、色をグレーに変更し、ブロックに変換し、2D作業の下図とする。
(図面を変更できなくなればよいので、レイヤーをロックして固定してもよい。)
1通り芯のレイヤーに移動し、通り芯のラインを作図する。
1階左側の部屋に、設備機器や備品をレイアウトする。
右側の部屋に作図されていない間仕切壁のラインも作図する。
左端の部屋の設備機器、備品、追加した壁のラインをすべての部屋に複写する。
設備や備品のデータを個別にFreeCADに読み込んでレイアウトしてもよいが、正確な位置に配置するのは手間がかかる。
2DCADを使えば、3DCADよりも効率的に図面をまとめることができる。
注意すべき点は、下図にした平面図を2DCADで修正しないことである。
下図を修正したい場合は、BIMでモデルを変更してから2Dデータを作成し、2DCADの図に合成すれば、BIMと2DCADの関係を維持することができる。
■2DCADのデータをFreeCADに戻す
2DCADで図面を完成するのであれば、データをBIMに戻す必要はないが、基本設計などでBIMだけで図面をまとめたい場合もあるので、2DCADの図をFreeCADに戻す方法についても練習する。
RevitとAutoCADであれば、DWGデータをRevitに読み込むときに、基準点が変わることはないので簡単に合成ができるが、FreeCADの場合は特別な操作が必要になる。
FreeCADと2DCADでDXFデータを移動すると、次のようなことが起こる。
1)TechDrawのPageをDXFに変換すると、用紙の左下が座標原点になる。(エクスポート)
2)DXFデータをFreeCADのモデル空間にインポートすると、DXFの座標原点を3Dモデル空間の座標原点に合わせる。(インポート)
3)3Dモデル空間のオブジェクトをTechDrawのPageに挿入すると、図形の中心が用紙サイズの中心になるように配置される。(ビューの挿入)
■2DからFreeCADに戻す図面を整理する。
FreeCADに戻す図面を作成する時に不要な部分を削除するので、2DCADで作成した図面は必ず保存しておく。
注意事項
ここまでの操作では、設備機器は、TOTOからダウンロードした詳細図を使用している。各部分に細かい曲線データを使用しているため線の数が多い。
この図をFreeCADにインポートすると、各線分が個別のShapeオブジェクトになる。オブジェクト数が急に多くなり、Shapeの選択や編集の操作、データの読込保存が極端に遅くなり、ほとんど使えないレベルになる。
(設備機器4種類×4室で、Shape数18,000程度になる。曲線のShapeが多いと特に遅くなるように感じる。
データを軽量化するために、設備機器の図を意匠図用の線数の少ないものに置き換える。
これにより、Shape数1,800程度になり、普通に使用できる速度になる。)
FreeCADで合成する時の基準とするために、平面左下の柱を長方形で上書きする。
ブロック化していた平面図(下図)を削除して追加情報だけの図面にして別名で保存する。
用紙サイズの枠は残す。
寸法は変換されないので、残してもよい。
Ctrl+Z(アンドゥ)で戻し、枠と2階以外の部分を消して、DXFファイルで保存する。
■2DCADで編集したDXFデータをFreeCADにインポートする
FreeCADに戻り、編集メニュー>設定の中のインポート/エクスポートでDXFタブの設定を確認する。
設定は基本的には標準設定のままでよいが、次の部分を確認しておく。
・インポートの中の□テキストと寸法はOFFになっている。現在のバージョンでは寸法やテキストは変換できないようなのでOFFのままでよい。
・作成は、●パート形状を単純化でよい。
・その他は、標準設定のままとする。
BIMワークベンチに移動する。
作業平面(WPセレクター)は上面図に移動する。
3Dビューに戻り、[Home]キーを押して、ホームビューに移動する。
ファイルメニュー>インポートで、作成した1階のDXFファイルを開く。
(ShapeからShape933までできる。)
(すべてのShapeを選択する。)
Shapeは自動的にCompoundの下層に入る。
同様にして、2階のDXFファイルを読み込むと、Shape934からShape1867ができる。
モデルタブで、Shapeをまとめて選択し、 コンパウンドの作成ツールをクリックして、Compound001を作成する。
■2DCADデータをTechDrawのPageに合成する
インポートした2Dデータを、TechDrawのPageに合成する。
FreeCADのPageに図面ビューを挿入する場合、図面の位置に関係なく図面(オブジェクトの範囲)の中心がPageの中心になるように配置される。
今回2Dデータを作る時、用紙サイズの枠を作図し、その中に図面を納めたので、図面ビューをPageに挿入すると、自動的に用紙の中心合わせで図面が配置されることになる。
図面ビューをPageに挿入する方法としては、図面ビューの挿入ツールと、 Arch Workbench オブジェクトを挿入ツールの2つがある。
図面ビューの挿入ツールは、ビューの中の閉じた図形は面と判断されて塗りつぶしされるので、ビューが重なると下の図形が見えなくなる。
※その後の検討で、編集メニュー> 設定> TechDrawの 色タブで □面の透過 をONにすれば、塗りつぶしが表示されないことが確認できた。
さらに、高度な設定タブで □面を検出 をOFFにすれば、面が作成されないので、カーソル移動中に面が選択されて下の図が見えなくなることもない。
この設定であれば、図面ビューの挿入ツールで挿入した図形でも合成することができる。
ただし、Viewをドラッグして移動することはできるが、ポイントを指定して位置合わせする方法はわからないので、いまのところは図面サイズの枠を使って合成する方法を考えている。
Arch Workbench オブジェクトを挿入ツールは、BIMワークベンチの 断面平面ツールで作成したワイヤー(線画)を挿入するので、面が塗りつぶされることがない。
したがって、図面ビューの上に重ね書きする場合には、 Arch Workbench オブジェクトを挿入ツールを使う必要がある。
BIMワークベンチで、作業平面(WPセレクター)を上面図にする。
モデルタブで、1階平面のCompoundを選択して、 断面平面ツールをクリックして、セクションオブジェクトを作成する。
さらに、2階平面のCompound001を選択して、セクション001を作成する。
セクションとセクション001を選択して、プロパティのOnlySolidsを見ると、trueとなっている。
trueの時は、2Dモデルは無視される。falseに変更すると、2Dモデルも断面に表示される。
右図では、Compoundとセクションが表示になっているが、Compoundとセクションは、3Dビューで表示する必要がないので非表示にしてもよい。
Pageタブに移動する。
モデルタブでセクションを選択して、 Arch Workbench オブジェクトを挿入ツールをクリックする。
モデルタブで、Pageの下層にArchViewができるが、この段階ではPageに表示されない。
続けて、セクション001を選択して、 Arch Workbench オブジェクトを挿入ツールをクリックする。
モデルタブで、Pageの下層にArchView001ができるが、Pageに表示されない。
Pageでの図面の縮尺は1/100であるから、Scale=0.01に変更する。
Pageにセクションの図形が表示される。
ArchViewが複数ある時は、別々にScaleを変更すると、先に変更したビューの位置がずれることがあるので、ArchViewをまとめて選択し、Scaleを調整する方がよい。
FreeCADの現在のバージョンv0.21では、寸法や文字はDXFデータに変換できないので、TechDrawのツールで記入する。
ArchViewで挿入したビューはTechDrawのツールでは編集できないので、変更があれば2DCADに戻って修正して、DXFファイルの読み込みから繰り返す。
■3Dビュー(モデル空間)で、DXFファイルを合成する
Pageに2DCADを重ねるだけならここまでの方法でよいが、モデルに直接重ねるには、読み込んだ図面を移動する必要があるので、位置合わせの基準になる点を作成しておくことが重要である。
今回作成した2D図面は、図面を作成する時に図面の原点をモデル空間の座標原点と一致するように調整していないので、モデルに重ねたい場合は、正しい位置に移動する必要がある。
BIMワークベンチに移動し、WPセレクターを上面図に移動する。
[Home]キーを押して、3Dビューをホームビューにする。
Ctrl+Vでペーストすると、Compound002ができる。
■平面位置を合わせ、高さを調整する
図面を位置合わせするために、建物のモデル全体を選択して非表示にする。
CompoundとCompound001も非表示にする。
2D図面には、位置合わせの基準になるように左下の柱を作図してあるので、柱のコーナーをガイドにして移動すれば、平面的に正しい位置に合成できる。
Compound002を選択し、プロパティでPlacementをクリックし、Z=750とする。
(モデルの床は、FL+150までかさ上げしているので1FL600+150=750とする。)
Compound003を選択し、プロパティでPlacementをクリックし、Z=3750とする。
(1FL600+階高3000+150=3750となる。)
Compound002と003を非表示にする。
Compound002の下層のShapeを上から4つ選択して表示にする。
用紙枠は最初に作図したので、データの一番最初に来ている。
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