Tips集【壁ツール】複層壁の仕上げを作る マルチマテリアルと多層壁の設定から結合まで
RevitなどのBIMソフトでは構造と仕上が複層になった部品があり、壁や柱を配置すると、躯体や仕上げの種類を判別して自動的に結合する機能がある。
FreeCADでは、種類の違う部材や仕上げを自動的に結合することはできないので、壁の仕上はひとつずつ作成する必要がある。
■マルチマテリアルを作成する。
FreeCADにはマルチマテリアルという機能があって、複数の層で構成されたオブジェクトを作成することができる。これを壁オブジェクトのmaterialプロパティにリンクすると複層の壁を作成することができる。
(マルチマテリアルをリンクできるのは、壁とパネル、建具オブジェクトに限られることが技術ドキュメントに書いてある。建具の場合は複層になるのではなく、割り当てられたコンポーネントに該当するマテリアルが適用される。)
マルチマテリアルをリンクした複層の壁は、連続壁以外の結合部を正しく処理することができないので、分離した複数の壁を組み合わせる場合には使うことができない。
鉄骨造の間仕切り壁のように独立した壁であれば使うことができるが、ひとつの壁なので層ごとに高さを変えるようなことはできない。
マテリアルオブジェクトをまだ作成していないときに、マテリアルツールをクリックすると、タスクタブに建材の品質表示オプションが表示される。
「プリセットを選択」のプルダウンメニューでマテリアルを選択できるが、種類が少ないので実用的ではない。
名前にMaterialと入っている。プロパティは後で変更できるので、そのままOKすると、モデルタブにMaterialsグループと、下層にMaterialオブジェクトができる。
ここでは、マルチマテリアルを作成するので、「新しい複合マテリアルを作成」をクリックすると、タスクタブが複合マテリアルの定義オプションに変わる。
名前はMultiMaterialとなっているが、変更しなくてもよい。
「追加」を作成したい層の数だけクリックする。(4回クリックして4層壁を作る。)
名前は新規のままで変更しなくてもよい。
マテリアルの欄をダブルクリックして、下矢印で登録されているマテリアルから選択する。
(Materialしか登録していないので、Materialを選択する。)
マテリアル欄にすべてMaterialを選択する。
(Materialしか登録していないので、Materialを選択する。)
マテリアル欄にすべてMaterialを選択する。
厚み欄をダブルクリックして、各層の厚さを設定する。
厚さは上から、仕上50、躯体200、下地25、仕上50と設定する。
マルチマテリアルの厚さは、壁オブジェクトの設定よりも優先するので、リンクした壁はマルチマテリアルの厚さの複合壁になる。厚さにマイナスの数値を入力すると、その厚さの空白の層ができる。
壁オブジェクトで設定した壁厚を優先したい場合は、どこかの層を厚さ0にすればその層で厚さを調整して、オブジェクトで設定した厚さの壁になる。
モデルタブを見ると、Materialsグループと下層にMaterialオブジェクトとMultiMaterialオブジェクトができている。
MultiMaterialをダブルクリックして、オプションを表示すれば、マルチマテリアルの構成を変更することもできる。
■壁にマルチマテリアルをリンクする。
作業平面を上面、3Dビュー(Homeビュー)にして、直線、連続線、交差する直線、複数の線を組み合わせたSketchを作図する。
オブジェクトをまとめて選択して、壁ツールで壁に変換する。壁厚200、高さ2000とした。
壁をまとめて選択して、Componentの中のMaterialプロパティクリックし、右端の[...]をクリックして、リンクオプションを表示する。
交差した直線は、交差部の結合は処理されていない。
Sketchは線ごとにマルチマテリアルの各層の厚さが割り当てられている。
結合部は、線が連続しておらず、面も一部崩れているので、モデルとしては使えない。
このように、マルチマテリアルの壁は、壁を結合することができないので、複数の壁を組み合わせる場合には使うことができない。
マルチマテリアルの層を割り付ける方向は、壁のベースラインの起点終点の方向や、配置基準(Align)によって変わってくるので、ベースラインの作図方法を変えるか、マルチマテリアルの構成の順序を逆転する方法で調整する。
■多層壁とは
FreeCADで複層壁を作成するもうひとつの方法は、多層壁を使うことである。
多層壁はひとつのベースラインを使って複数の壁を作成する方法である。
壁は独立しているので、配置基準、オフセット、厚さ、高さを別々に設定することができる。
壁の下層のベースラインは共通なので、どれかの壁のベースラインの長さと方向を修正すると、他の壁に反映される。
元になる壁オブジェクトは壁ツールで直接作成してもよいし、Draftツールで作図したベースラインか、Sketcherで作成したベースオブジェクトを壁に変換してもよい。
元になる壁オブジェクトは壁ツールで直接作成してもよいし、Draftツールで作図したベースラインか、Sketcherで作成したベースオブジェクトを壁に変換してもよい。
壁オブジェクトができたら、下層のWallTraceかベースオブジェクトを選択して、壁ツールをクリックすれば、同じ位置に多層壁ができる。
上面ビューに移動して、直線と連続線、交差した直線、線を組み合わせたSketchを作成すする。
図形を選択して、壁ツールで壁オブジェクトに変換する。
中央、壁厚200、高さ2000とする。
オフセットは0のままとする。
元になる壁のベースオブジェクトを選択して壁オブジェクトに変換すれば、元の壁のどちら側にでも複層の壁を追加することができる。
実際に建物モデルの仕上として多層壁を使う方法を検討する。
柱800×800、壁はAlignを左、壁厚200、たかさ3000とした。
右側の部屋で、周囲の壁オブジェクトの下層のベースライン(WalkTrace008、009、010、012)をまとめて選択して、壁ツールを2回クリックして、断熱と仕上用の壁を作成する。
作成した壁は、最初の4つを壁断熱グループに、残り4つを壁仕上グループにまとめる。
壁の内側に断熱用の壁ができる。
左側の内壁は断熱材が必要ないので、壁011は削除する。
断熱壁の内側に仕上の壁ができる。
右側の内壁は断熱材がないので、オフセットを200に変更して壁面に合わせる。
柱廻りは壁のベースオブジェクトがないので、柱の沿って連続線でベースラインを作図する。
Alignを左、Heightを2500(天井まで)、オフセットを0(柱面)、壁厚を100に変更する。
柱廻りに仕上の壁ができる。
部屋の内側の仕上壁をまとめて選択して、建築オブジェクトの加算ツールをクリックすると、仕上壁が結合し、壁が最後に指定した壁オブジェクトの下層に移動する。
部屋の内側の仕上壁をまとめて選択して、建築オブジェクトの加算ツールをクリックすると、仕上壁が結合し、壁が最後に指定した壁オブジェクトの下層に移動する。
作業ウインドウで確認すると、壁の接続部が結合処理されて、重複部の線が消えている。
左上の部屋の場合は、右の外壁と中央の壁の途中に別の壁があるので、ベースオブジェクトを使って多層壁にすることができない。
壁と壁が接する場合などは、壁の優先順位を考慮して、壁を作成する順序を調整することも必要である。
外壁の内側にベースラインを作図して、断熱の壁と仕上壁に変換する。
内部の壁と柱廻りにベースラインを作図して、壁に変換する。
このように元の壁のベースオブジェクトをそのまま多層壁にすると、接続部で重複部分ができる場合は、新しくベースラインを作図して壁に変換する。
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