Tips集【壁ツール】壁ツールで連続壁を結合して作成するためのヒント

 BIMワークベンチの壁ツールには、壁を自動的に結合して連結処理する機能がある。しかし、想定外の変形をすることが多く、思い通りの壁を作るのは難しい。Sketcherで壁芯図を作成し壁ツールで一括変換すれば簡単に結合した壁を作成できるが、個々の壁を直接作成することも必要になる。

 標準設定メニューに□壁の自動結合□可能な場合には壁のベーススケッチを結合のオプションがある。この設定によって結合方法(データの構成)に違いがあることは、「08.1+2壁ツール 壁を結合する 自動結合のオプションと編集方法」に記載した通りであるが、できるだけ設定変更や編集をしないで壁を結合する方法も検討しておきたい。


 結合した壁をデータで確認すると、2通りの形式があることがわかる。
1. 複数の壁のスケッチをひとつのベーススケッチにまとめる。
 これはSketcherで作図したスケッチを壁ツールで壁に変換する場合と同じで、壁オブジェクトの下層にベーススケッチとして組み込まれる。

 壁ツールでは、□ベーススケッチを結合をONにした場合に、壁の始点または終点が元の壁に重なっているとひとつのベーススケッチにまとめられる。
・コーナー部分は、連続していれば連結処理されるので、正しい結合モデルとなる。
・個々の部分の壁にはプロパティがないので、部分的に壁厚や高さを変更することはできない。Sketcherで位置を変更できるだけである。


2. 壁の下層に別の壁オブジェクトを含める。
 建築オブジェクト加算減算ツールで処理した場合に、片方の壁が他方の壁の下層に移動して合成される形と同じである。ただし、壁オブジェクトを別の壁にドラッグアンドドロップするだけでは壁オブジェクトの下層に移動することはできない。

 壁ツールでは、□ベーススケッチを結合がOFFの場合に、始点終点が元の壁に重なる壁は、元の壁の下層に作成される。
・表面上はひとつの壁になり重複部分は結合処理されるが、ベーススケッチがまとめられているわけではないので、直角以外の結合部分が連続的に処理されることはない。
・個々の壁は、それぞれプロパティを設定できるので、部分的に位置や壁厚、高さを変えることができる


 壁ツールでは、□壁の自動結合がONになっていると、元の壁に重なる壁を作図すると自動的に結合する。プログラムが重なると判断する基準は壁の始点または終点のポイントが元の壁に含まれるかどうかで決まる。壁を作図するときに、指定するポイントが元の壁と重なっていることを示すことが重要である。


壁ツールの使い方としては、壁厚と高さが同じ壁を連続して作成することが多いので、□ベーススケッチを結合オプションをONにした場合の操作方法から確認していく。

標準設定で、壁の自動結合はON、ベーススケッチを結合はONにする。
作業平面は上面、上面ビューにする。WPスナップ、端点、中点、交点スナップをONにする。
Sketcherに移動して、原点を中心に2000x2000の正方形を作図する。

BIMに戻り壁ツールをクリックして、配置(Align)はCenter、壁厚を500(画面でわかりやすいように大きな数値にする。)、高さを3000とする。
そのまま壁ツールで、正方形の左辺で、端点スナップで壁を作成する。
壁オブジェクトの下層にWallTrace(スケッチ)ができる。
壁を非表示にしてWallTraceをダブルクリックすると、ベーススケッチを確認できる。

■壁の線または面を参照しない(元の壁を認識しない)場合
壁ツールをクリックして、正方形の上辺にカーソルを近づけて、壁端に端点スナップのマークを出してクリックする。正方形の反対側に伸ばしてスナップクリックして壁を作成する。

新しい壁は、元の壁上の点を参照していないので別の壁と判断されて、モデルタブに別の壁オブジェクトができる。作業ウインドウのモデルは重なっているだけで、結合しているわけではない。
壁を非表示にして、下層のスケッチをダブルクリックすると、元のベーススケッチとは別のスケッチができていることがわかる。

■壁のコーナーを指定する場合
壁ツールをクリックして、壁小口の外端にカーソルを近づけて、壁線の端点スナップのマークを出してクリックする。正方形の反対側に伸ばしてスナップクリックして壁を作成する。

新しい壁は、元の壁の外端から作成され、重複部分が結合処理される。モデルタブには別の壁オブジェクトはできない。
壁を非表示にして、下層のスケッチをダブルクリックすると、元のベーススケッチに新しい壁のベースオブジェクトが追加されている。
斜め壁を作成してみると、スケッチが接続していないので、スケッチのそれぞれの壁が作成されて、重複部分が処理されているだけである。

■壁中心線で接続する場合
壁ツールをクリックして、壁小口の中央にカーソルを近づけて、中点スナップのマークを出してクリックする。正方形の反対側に伸ばしてスナップクリックして壁を作成する。

新しい壁は、元の壁芯の端点から作成され、連結処理される。モデルタブには別の壁オブジェクトはできない。
壁を非表示にして、下層のスケッチをダブルクリックすると、元のベーススケッチに新しい壁のベースオブジェクトが追加され、スケッチがつながっていることがわかる。
スケッチが接続しているので、接続部が連結処理され正しく結合している。斜め壁でもそれぞれの壁を延長する形で結合している。

以上のことからわかるのは、壁を正しく結合するためには元の壁の基準線にスナップすることが必要ということである。斜め壁であっても基準線が連続するように指定すれば、隙間なく結合することができる。



■ベーススケッチを結合した場合の訂正方法について
作成中に間違った場合、失敗した場合は、ベーススケッチが一体化している壁オブジェクトを削除してはいけない。間違った部分を消すつもりでも、壁全体が消えてしまう。
その場合は、ベーススケッチをSketcherで開いて線を編集する。
Ctrl+Zでアンドゥしても、正しく戻せないことが多い。アンドゥしてもモデルは戻らないが、再描画ツツールStd Refresh.svgが有効(着色状態)になった場合には、クリックすると戻っていることがある。この操作は必ず有効というわけではないので、どのような変形をするか試して理解してから使うようにするのがよい。



■連続した壁の一部を変更するためには、□スケッチを結合オプションはOFFで壁を作成する。

標準設定で、壁の結合はON、ベーススケッチを結合はOFFにする。
壁の下図になる簡単な縦横の線をSketcherで作図する。
元の壁を認識しない位置に壁を作成した場合に、別の壁オブジェクトができることは、上の説明と同じである。

最初の縦の壁を作成した後、壁の外端をスナップクリックして横方向の壁を作成する。
モデルタブに縦壁のオブジェクトができる。
横壁のオブジェクトもできるが、縦壁オブジェクトの下層に入っている。
作業ウインドウを見ると、縦横の壁が結合したように見える。
縦壁と横壁のベーススケッチは別々に作成される。

横壁小口の中点をスナップクリックして、下方向に壁を作成する。
モデルタブの元の壁の下層に新しい壁オブジェクトができる。
作業ウインドウでは、元の壁との接続部は結合しているが、連結処理されていない。

斜め壁を作成して、結合状態を確認する。
元の壁の外端に端点スナップクリックして、斜め方向に壁を作成する。
クリックした点から壁が作成され、重複部分は結合しているが、連結処理されていない。

元の壁の小口の中点にスナップクリックして、上方向に壁を作成する。
他と同じように、重複部分のみ結合して、連結処理されていない。



壁のスケッチを結合をOFFにしていると、新しい壁は最初の壁の下層にできて、表面上は最初の壁オブジェクトに結合してまとまっているが、下層の壁オブジェクトはそれぞれが独立している。
下層の壁オブジェクトの壁002を選択して、プロパティを変更する。
壁の高さを5000、壁厚を200に変更する。
壁厚が変形し、高さが変わったので上面図の表示が変わっている。






■斜めの壁の接続部分の修正方法
壁が斜め方向に接続する場合は、ベーススケッチを結合しないと壁の接続部が連結処理されない。この部分を連結するためには、ベーススケッチを編集する必要がある。

壁下層のそれぞれの壁を表示しながら、該当する壁を探す。今回は壁003と壁004をつなげてみる。

壁オブジェクトと壁の下図スケッチを非表示にして、壁003と004のベーススケッチを表示にする。
壁003のベーススケッチをダブルクリックしてSketcherに移動する。

壁003のベーススケッチだけが編集状態になっている。
壁004のベーススケッチは見える状態になっているので、スケッチャー CarbonCopy.svgカーボンコピーツールをクリックし、壁004のベーススケッチをクリックする。

壁004のベーススケッチがコピーされて編集状態になり合成される。

閉じるで戻り、壁003を表示すると、003と004が合成した形状になっている。
壁004も表示して確認すると、元の形状のまま残っている。

壁004と下層のベーススケッチは必要ないので、選択しDeleteキーで削除する。


壁003と004のベーススケッチが合成されているので、接続部が連結処理されている。















以上のことから、壁ツールは□ベーススケッチを結合オプションはONにするのが、基本的で効率的な使い方といえる。
OFFにすることで、連続壁を部分的に変更することができるが斜め壁接続部を手動で連結することが必要になる。

斜め壁が多い建物ですべての壁を□ベーススケッチを結合OFFで作成するのは効率的ではないので、基本的にはONの状態で使用し、部分的にOFFにするのが適当である。後で変更が必要になった部分は、ベースオブジェクトをSketcherで開いて、変更部分を削除してから新しい壁を作成するのもひとつの方法である。

ほとんどの壁が直交する建物はONでもOFFでも見かけ上は同じように作成できるが、壁とベーススケッチのデータ構造が違うので、壁の編集方法が違うことには注意が必要である。

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