入門ガイド(2D-CAD)2:スナップと寸法、縮尺、補助線

CADで困っている人に(2)

TITLE: スナップとでたらめな寸法
 パソコンの画面は解像度が低く、図面に比べて小さいので、画面上でつながって見えたり、重なって見えたりする線が、データとしては、つながっていない、重なっていないということがあります。画面を見ても、どんどん拡大していかない限り判断できません。

 手描き図面では、図も寸法も作図する人が記入していたので、複雑な図面になると、寸法を決めるのは大変な作業でした。CADは寸法を自動的に計算してくれるので、CADになって最も楽になったのは、寸法記入の作業かもしれません。
 ところが、自動的に計算してもらうためには、図面も正確でなければいけないのです。線がつながっていなかったり、重なっていなかったりすると、その部分で図面に微妙なズレが発生します。そのまま作図を続けていくと、どこかで、右から描いてきたものと、左からのものが重ならないというようなことが起こります。また、寸法を測ると、1000mmのところが1001mmになっていたりします。こうなると、CADが計算してくれる数字が信頼できなくなるので、データとしては使いにくいものになってしまいます。

 手描き図面では、線はつながっているように見えればいいし、線の位置が多少ずれていても、寸法を記入してすませることができました。また、描いてあるものに合わせて線の位置を微調整し、きれいに見えるように整えることもできました。
 CADでは、点や線の位置を正確に決めて、作図を進めます。線の位置が正確なら、どの線でも基準にすることができるので、線の複写や移動を繰り返しながら作図することができます。
 CAD上に新しい線を作るには、どこか基準になる線と新しい線の位置関係が、数字でわからないと正確な図面になりません。正確に作図するというのは、図形として正確に詳細図を描くということではなく、作図する縮尺に合わせて適度に省略していても、線の寸法関係は正確に描いてあることです。


 それでは、正確な図面を作図するために、絶対に必要なスナップという機能について説明します。
 スナップとは、CADが画面上にある線の端点(始点や終点)、中点、線と線の交点、円の中心など特別な点を自動的に探し出す機能です。スナップできる点はCADによって違いがあるので使うCADのマニュアルを確認してください。
 端点スナップをONにして、線の端点にカーソルを近づけて(重ならなくてもよい)クリックすれば、端点にスナップします。どのくらい近づければよいかは、それぞれのソフトの設定によるので、具体的に何ミリまでと言うことはできません。

 普通のCADでは、スナップする点とスナップのON/OFFを選べるようにアイコンなどがあります。複数のスナップを同時にONにすることもできるので、通常はよく使うスナップをすべてONにしたままで使用します。

 JWCADは、スナップを制御するアイコンがなく、スナップしたい点にカーソルを近づけてマウスを右クリックすることで、スナップする仕様になっています。
 また、VectorWorksは、標準で自動的にスナップする仕様になっているので、線を描いているときに、スナップできるポイントにカーソルを近づけると図上に端点とか、図形とか表示が出ているはずです。
 AUTOCADにも、Oスナップという機能があって、これをONにすると自動的にスナップさせることができます。 
 自動的にスナップする機能があるというのは、作図するときに、それだけ頻繁にスナップを使うということです。

 新しく線を描くときには、点や線を基準にして作図します。また、複写や移動をするときには、画面上で見て適当に移動するのではなく、線を選択した後、元の図形の基準点、移動先の点という順序で指定します。このときに、元の基準点をスナップで指定し、移動先の点をスナップで指定することで、正確に移動することができるわけです。
 作図をするときには、全くフリーの点を指定するということはほとんどなく、画面上にある点と線を使って、作業を進めていきます。
 スナップを使うことで、つながっていない線や、重なっていない線がなくなります。また、基準点を正確に指定することで、正確な位置関係で図面を作成することができます。CADで描いた図面が正確で、図面上できちんと寸法を測定できるのは、スナップを使っているからです。 



TITLE: 縮尺の問題
 手描き図面は、縮尺とレイアウトを決めてから、作図します。
 CADでも、ほとんどのソフトが、縮尺と用紙サイズを設定できるようになっていて、画面上に用紙の大きさが表示されます。ただし、これはその縮尺で作図できる範囲を表示しているだけです。
AUTOCADだけは、その設定がないので、印刷するときに、縮尺と用紙サイズを指定し、印刷範囲を決めて印刷します。ただし、AUTOCADでも最初に自分で用紙の大きさを描いておけばいいので、図面のレイアウトを決めるのに、縮尺が設定できるかどうかはたいした問題ではありません。

 手描き図面は、最初からその縮尺に変換した長さで作図しますが、CADでは図面は原寸で作図します。原寸とは実際の寸法、縮尺でいえば1/1という意味です。
 600mm×600mmの正方形は、1/100で作図するときにも、1/300のときにも、同じように600×600として入力します。1/100のときには6×6、1/300のときには2×2と入力するわけではありません。
 ただし、文字や寸法の設定に関してだけは、AUTOCAD以外のソフトは、指定した縮尺の図面で何mmと設定します。AUTOCADには縮尺の設定がないので、作図している画面の図は1/1で描いた図と同じものです。
 ここに1/100で印刷したときに3mmの高さの文字を書き加えようとすると、画面上の図が印刷のときに1/100に縮小されることを考慮して、文字の大きさを100倍にしておく必要があります。文字の高さは3×100mmになります。 
 ところがここで、原寸で作図するということに固まっていると、300mmの高さの文字という考え方が理解できません。手で図面を描くときの文字の実際の大きさは3mmだからです。
  縮小した図面の上に書いた文字の大きさは、実際のサイズで書いた図面の上では、拡大しなければ、図面と文字の大きさが同じ関係にならないということです。 


  もうひとつ、これはCADの設定や操作とは関係のないことですが、CADでは図面が拡大表示できるために、製図になれていない人は、必要のない部分まで細かく描き込んでしまうことがあります。
 手描きでは、細かく描こうとしても、線が重なってつぶれてしまうので、限界があります。CADでは拡大表示できるので、細かく描き込みできるのですが、印刷してみると線が重なって区別がつかなくなることもあります。
 作図するときには、縮尺を考えて、どのくらいの間隔で線を引くと、印刷するときに重なってしまうのかを把握しておくことです。また、図面の描き込みについても、縮尺に応じた省略をすることも必要です。



 TITLE: 補助線とか仮点とか
 CADによっては、線色、線種の中に画面に表示されるが、印刷されないという性質のある線を設定できるものがあります。これを使って描いた線や点は、印刷されないので、作図の補助線にするのに便利という考え方があります。
 そういう線を考えた理由は、手描きの作図方法にあるのではないかと思います。手で作図するときには、レイアウトを考え、最初にうすく下書きをします。そして、下書きをなぞりながら線を引いて、図面を完成させていきます。補助線というのは、この下書きの線と同じような使い方ができるのです。

 手で作図していた人の中には、こういう使い方に慣れているので、補助線を使って図面の下書きになる簡単な図を描こうとする人がいます。しかし、これはいい方法ではありません。 CADで作図をするときにも、作図の基準とするために、図面と関係のない線をかなりたくさん描きます。しかし、そのときにも、線種を補助線に変更して線を描き、また、元の線種にもどして作図を続けていては、効率的ではありません。その場で必要な線を描き、必要がなくなれば消すというやり方で十分です。
 そもそも、下書きの線をなぞるという方法がCADには適当ではありません。CADは画面上の図を複写しながら操作していくことで、効率的に作図できるソフトですから、下書きに合わせて、線をひとつずつ描いていくのはムダな作業です。
 これだけCADが普及して手で作図することはなくなったのに、いまだに補助線を使って作図する解説を見かけることがあることが不思議です。


 この印刷されない線を使わない理由が、もうひとつあります。CADデータを他のソフトのデータに変換して渡すときに、この印刷されない線や点が、他のソフトでは普通の線や点になって画面上に表示されることがあります。データをもらった人は、わけのわからない線や点に悩むことになります。それだけなら、まだいいのですが、その線や点があるために、印刷に支障となることもあります。
 このような理由で、補助線などはできるだけ使わない方がよいのですが、どうしても使う場合には、レイヤー分けをして、まとめて非表示にしたり、消去できるように考えておくことが必要です。



 CADに特有の考え方としてはここまでです。わからないという人もいると思います。
CADを操作しながら説明しているわけではないので、ややこしいだけです。ここで言いたかったことは、簡単に言えば、CADにはレイヤーという機能があって、編集対象、表示を制御できるということと、スナップを使いなさいということだけです。

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