入門ガイド4.1 BIMとFreeCADの状況、BIMの問題点と作成方法について

 
3DCAD初心者のためのFreeCAD-BIM入門ガイド

S.4 BIMとFreeCADの状況
 建築の世界では、かなり以前から3D設計の可能性が取り上げられていました。最近は、ゼネコンや大手設計事務所でBIMの導入が進み、独自のアプリケーションを開発するなど、2DCADが急速に普及した頃と同じような状況が生まれています。
 昔は手で図面を描いていたと言うのと同じように、設計図を作成していたこともあったと言われる時代がそこまで来ているのかもしれません。


 BIMはモデリングだけでなく、敷地の条件をシミュレーションしたり、構造や設備設計と直接リンクしたり、数量集計や、概算工事費を計算するなどの機能もメリットとして取り上げられています。
 FreeCADは、他の設計とのモデルの共有は可能ですが、3DCADなのでシミュレーションや数量集計などは実装していません。
(もしかすると、誰かがすでに開発していて、それを見つけていないだけかもしれません。
スプレッドシートは実装しているので、少し手間はかかりますが簡単な集計程度であればプログラムの知識がなくても作成できます。)

 今の段階でFreeCADのBIMで確実にできることは、BIMモデルを作成することとモデルにリンクした2D図面を作成するところまでです。プログラムが公開されているので、追加のプログラムやマクロが開発される可能性はありますが、企業が開発しているアプリケーションではないので、開発の方向や進捗については明確ではありません。FreeCADユーザーとしてできるのは、自分でプログラムを追加するか、現状の機能を最大限活用しながら新しいツールが開発されるのを待つことです。



 BIMは単なる設計ツールの範囲を越えて、関連する建築情報との連携、施工や建物のメンテナンスにまでつながるシステムを構築しようとしています。
 しかし、モデリングができなければ何も始まりません。寸法を正しく作図していないCADデータが、結局使い物にならなかったように、正しくモデリングされていない3Dデータは、どこかの段階で破綻する可能性を含んでいます。
 これは、最初から詳細なモデルを作成するということではなく、各段階に応じて必要な情報を正しくモデリングすることが必要ということです。

 BIMでモデリングすると、壁や柱などの部品を配置してモデルを構築できるので、いかにもそれらしい建物モデルが簡単にできてしまいます。それが正しい構造であるのか、正しい寸法や位置で作成されているのかはソフトが保証してくれるわけではありません。

 FreeCADはモデリングの履歴、データ構造とパラメーター、オブジェクトのリンクがすべて見えて直接操作できるので、BIMモデリングの仕組みを知ることができるソフトです。履歴がわかるということは、技術者の能力がわかるので、厳しいソフトです。
 ブラックボックスの部分が少ないので、操作と結果の対応関係がわかりますが、それだけ設定も複雑になってきます。ソフトに任せておけば形ができ上がるというようにはなっていません。

 FreeCADを使ってBIMモデリングの考え方を理解することは、今後、FreeCADのBIM機能が追加された場合だけでなく、他のBIMソフトを使う場合でもソフトの中で何が行われているかを理解する手掛かりになります。



■BIMモデリングについて
 BIMモデリングには2つの面があります。ひとつは、ツールを使って新しい建物のモデルを作成することですが、もうひとつは、今あるモデルを変更することです。
 
 BIMでは、モデルを修正すると、変更がすべての図面に反映され、整合性が確保されることがメリットとして強調されています。オブジェクトが基準線やレベルに自動的にリンクされていることも変更を容易にしています。
 しかし、もしデータの構成を知らない誰かが部分的に部品を修正したり、基準線を移動したりした場合、その要素が他の部分にリンクされていると、画面に見えていなくても、リンクするすべての部分とその関連部分に変更が及びます。
 例えば、どこかの階の壁芯を移動すると、他の階の壁も移動してしまう可能性があります。リンク関係を把握していないと予想もしない箇所が自動的に変更されるリスクはあるのです。BIMになっても、修正間違いの問題は簡単には解決できません。

 ここからは、まずBIMツールを使ってモデルを作成することから検討します。FreeCADでは自動的にリンクすることは少ないので、自動的な変形を可能にするリンク機能については、別に検討します。とりあえずモデルが作れればよいということであれば、リンクに関する部分は飛ばしても問題ありません。



■BIMモデリングのフロー
 CADはどこから描き始めても、後でレイアウトすればよいという考え方もありますが、BIMモデリングに関しては、ある程度進めるべきフローというものがあります。部品を配置していくためのガイドとなる要素から順に配置していきます。

 最初に通り芯、レベルを設定してから、壁や構造体(梁、柱、スラブ)、建具(ドアと窓)、屋根、階段、フレーム(手摺、金物)、設備(家具、設備機器など)という構成要素の順に配置します。

 階別にモデルの部品を配置して作成し、コピーで上階に積み上げていくのがBIM的な作成手順です。FreeCADでは、部材を細かく設定する必要があるので、同じ種類の部材を最上階まで積み上げてから、次の種類の部材に移る方が効率的なこともあります。

 BIMソフトRevitでは、平面に部品を配置すると平面図に変換され、3Dビューにはモデルが作成されるので、平面図を作成しているイメージでモデリングすることができます。
(実際には、図面が作成されているのではなく、モデルの平面ビューを図面のように処理して見せているので、簡易表示、詳細表示のように図面の見え方を変えることができます。)
FreeCADでは、平面ビューに配置するだけでは直接図面化されることはないので、部品はそのままの形状で平面に残ります。3Dモデルから2D図面を作成するには、TechDrawワークベンチのツールを使います。作成した図面は3Dモデルと完全にリンクしているので、モデルを修正すれば関連する図面を変更することができます。

次回からは各BIMツールについてまとめていきます。

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