入門ガイド3.3 PartDesignは先進的なツール群、特徴と制限事項を理解する

■PartDesignワークベンチとは

 PartDesignワークベンチはFreeCADの先進的なパラメトリックモデラーです。技術ドキュメントでは、「複雑な固体パーツをモデル化するための高度なツールを提供します。それは主に、機械部品の作成に焦点を合わせています。」と紹介されています。

 ネットを見ると、FreeCADのモデリングについてはPartDesignワークベンチの説明がほとんどです。PartDesignワークベンチはFreeCADの先進的で効率的なモデリングツールなので、それを説明しないとFreeCADの特徴を説明することにならないことはわかります。
 しかし、PartDesignワークベンチは、やや特殊なツールで、Sketcherというかなり特殊なツールを使わないとモデリングできないため、FreeCADは難しく感じるかもしれません。
 そもそも、FreeCADを使いたいのか、3DCAD(または3Dモデラー)を使って、モデルを作りたいだけなのか、そのあたりの区別がよくわからないのです。

 もうひとつのモデリングツールであるPartワークベンチは、従来のモデリング方法なので、多少でも3Dの知識のある人にはこちらの方がわかりやすいのですが、Draftワークベンチと切り替えながら使わないといけない点だけは、最初は混乱するかもしれません。

 PartDesignワークベンチで作成したオブジェクトをPartワークベンチやDraftワークベンチのツールで加工することも可能ですが、技術ドキュメントでも、そうすることの影響が理解できるまで、それらを混合しないことが勧められています。



■PartDesignワークベンチの特徴
 BIMワークベンチでは、Partワークベンチのツールが採用されています。
 FreeCADは、いろいろな種類のデータを混在させることができるので、PartDesignワークベンチのデータをBIMのデータと混在させることも可能ですが、あまりメリットはありません。

PartDesignワークベンチの特徴を見てみます。
1. モデルは必ずボディの中にあり、単一の連続したソリッドでなければならない。
 ボディとは、その中でPartDesignのモデルを作成する環境を提供するオブジェクトですが、ボディには複数の分離したソリッドを含むことができません。

分離した別のソリッドを作成するには、別のボディを作成します。ボディはいくつでも作成することができます。ボディをコピーすることもできます。

2. PartDesignワークベンチのツールは、ボディの中でしか使えません。
 PartDesignのツールは、Partワークベンチのツールと同じように見えますが、加算オブジェクトと減算オブジェクトを作成し、自動的に元のオブジェクトに合成します。(ブーリアン演算は必要ありません。)

Partワークベンチのように、複数のソリッドを作成して、ブーリアン演算で合成するという操作はできません。PartDesignにはソリッドのブーリアン演算というツールはありません。

他のワークベンチで作成したソリッドを、PartDesignのツールで操作することもできません。

3. PartDesignワークベンチは、Sketcherで作成したベースオブジェクトを立体化してソリッドを作成します。Draftワークベンチで作成した2Dオブジェクトをベースオブジェクトにすることはできません。
(Draftで作成すると、ボディの外にオブジェクトができます。これをボディにドラッグすると、ボディ内のオブジェクトとしてベースオブジェクトで使うことはできますが、FreeCAD本来の操作方法ではありません。)

 PartDesignで使うSketchは閉じたWireです。閉じていないと、ソリッドを作成できないのでツールで操作するとエラーになります。

4. 厚さのない2Dオブジェクトは扱えません。
 ボディは、ソリッドしか含むことができないので、2Dオブジェクトは扱うことができません。2Dオブジェクトを使った編集ツールもありません。
 PartDesignで扱うことのできる2D要素は、Sketchだけです。

5. PartDesignで作成したボディを他のワークベンチのツールで編集することはできますが、ボディの外にオブジェクトができるので、PartDesignのツールでは操作できなくなります。下層のボティは逆にPartDesignのツールでしか操作できません。


PartワークベンチとPartDesignワークベンチの違いについては、ブログ本編の「09.3+2PartワークベンチとPartDesignワークベンチの基本的な違い」にまとめましたので、興味のある方は読んでみてください。



■PartDesignワークベンチのツール
 BIMモデリングで使用することはありませんが、PartDesignのツールについて簡単に見ておきます。






これは、データム要素といって、作図の基準となる線や面を定義するツールです。機械設計では重要な要素のようですが、建築ではあまり使うことがありません。
(市販BIMソフトのRevitで、ファミリ(部品)を自作するときには、このデータムという用語が出てきます。モデルとリンクするための参照点程度に考えていますが、それでよいのか不明です。)



加算ツール群です。形状を作成し、既存のソリッドと合成します。
Partワークベンチでソリッドを作成し、ブーリアン演算でヒューズすることをまとめたような機能です。

PartDesign Pad.svg パッド(Pad)は、Partワークベンチの押出し(Extrude)に相当するツールです。

PartDesign Revolution.svg 回転体やPartDesign AdditiveLoft.svg ロフト、PartDesign AdditivePipe.svg スイープもあります。

PartDesign AdditiveHelix.svg 加法ラセンは、ラセン経路に沿って、プロファイルを押し出してソリッドを作成します。

PartDesign CompPrimitiveAdditive.png 加法プリミティブは、直方体、円柱のような3Dの基本形状を作成します。






減算ツール群です。形状を作成し、既存のソリッドから重複部分を削除します。
Partワークベンチでソリッドを作成し、ブーリアン演算でカットすることをまとめたような機能です。
減算ツールは削除されるソリッドがないと操作できません。

PartDesign Pocket.svg ポケットは、パッドの逆で、押し込んだ形状を削除します。

PartDesign Hole.svg 穴は、選択したスケッチから穴形状を作成し、削除します。複数のスケッチを一度に処理することもできます。

PartDesign Groove.svg 溝は、回転体を切取ります。PartDesign SubtractiveLoft.svg ロフトや PartDesign SubtractivePipe.svg スイープもあります。

PartDesign SubtractiveHelix.svg 減法ラセンは、ラセン形状を切取ります。

PartDesign CompPrimitiveSubtractive.png 減法プリミティブは、直方体、円柱のような3Dの基本形状を作成して、削除します。







ソリッドのミラーや配列複写もありますが、ひとつのソリッドにつながっている必要があります。離れた空間にソリッドを移動複写することはできません。
アイコンでいえば、青いベースになるオブジェクトが必要ということです。







削除系のツールは、Partワークベンチでもソリッドを直接変形していたので、PartDesignでも同じです。

PartDesign Draft.svg ドラフトは、面を選択して、傾斜させることができます。


PartDesign Boolean.svg右端にブーリアン演算のアイコンがありますが、これは複数のボディを使用したブーリアン演算というツールです。ボディを使って合成(ヒューズ)ができます。

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