10.6建具、手摺、笠木 多層壁に建具を配置する

最後に建具と手摺を配置して建物を完成する。
建具は壁に配置するだけなので特に難しいことはないと考えていたが、多層壁や複数の壁にひとつの建具を配置するので、実際に操作してみるといくつか問題があることもわかった。

配置する上での問題点が確認できれば、同じ操作を繰り返して建具を配置することができる。

建具の配置に関しては、エラーとなりもとの状態に戻すことができないことが多発するので、できるだけ頻繁にデータを保存しておくことが望ましい。


■多層壁への建具配置の問題について
1.建具で切抜きした多層壁で、建具を移動すると壁が一緒に移動することがある。

建具を壁に配置するときに、スナップするポイントがない時は、仮配置してから正しい位置に移動する方法をとっているが、多層壁に建具を配置した場合は建具と同時に壁も移動することがある。
さらに、問題なのはやり直すために建具を削除しても、壁をもとの状態に戻すことができないことである。

この問題を回避するためには、建具オプションで「ホストオブジェクトへ自動的に含める」のチェックをはずし、建具の位置が決定してからHostプロパティを使って切抜きするのが確実である。

もうひとつの可能性として、標準設定の□Move with HostがONになっていることがある。壁のプロパティでMove with Hostがtrueになっていたら、falseにして操作して試してみるとよい。

2.外壁のような複数の壁を表示した状態で、建具を配置しようとすると、スナップがうまく働かない。

FreeCADでデータ量が大きくなった時の問題点として、スナップがうまく機能しないことがある。

回避方法は、建具配置に必要のないオブジェクトはすべて非表示にして、関連するオブジェクトだけを表示の状態で作業すれば、スナップが比較的正しく機能する。

3.複層壁に配置する建具の見込(Width W1)が、オプションの数値とモデルが一致しない。

多層壁に壁厚と同じサイズの建具枠を配置すると、壁厚より小さい枠になる。(小さくなる程度は壁厚によりバラツキがあるので、いくつ追加すればよいとは言えない。いまのところ数値を入力してビューで確認しながら適当な寸法を決めている。)


■建具の配置
上記のような条件を考慮した上で、各面の壁に建具を配置する。今回のモデルでは、多層壁の他に、マルチマテリアルの壁、外壁と内壁やその他の雑壁を別々に作成して重ねている部分などがあり、場所によって多少の操作方法の違いがある。

建具作成ツールは、ウインドウ作成ツールを使用する。
(ドア作成ツールは、直前に設定した建具サイズが一部消えてしまうので、同じサイズを繰り返す場合、ウインドウ作成ツールを使う方が効率的である。)

1F内部の階段廻りの建具から作成する。
1Fの内部壁だけを表示にする。
①階段室と事務室の境の壁に建具を配置するために、階段側から壁面を選択し作業平面を移動する。
「ホストへ自動的に含める」をOFFにする。
simple door 810x2030を適当な位置に配置する。
枠見付(H1)30、枠見込(W1)125(実際は25+65+25=115であるが125で壁厚の枠ができる)、扉の見込(W2)40、オフセット0とする。

移動ツールでスナップで壁の隅に移動する。
simple doorは、扉が開く側から配置した方が、後の設定が簡単である。

Hostプロパティに複層壁(3枚の壁 仕上、下地、仕上)を指定する。
ビューで壁をクリックするとリストに表示されるので、その前後で関連する壁をまとめて選択する。
プロパティのOpeningを100%、Symbol Planをtrueにすれば、扉の開き状態を確認できる。

②③の扉も、配置する壁面を選択し、作業平面を移動してからsimple doorを配置する。
②は810x2030、③は660x2030とする。

②③もHostプロパティを変更して壁の切抜きを行う。


外壁のように複数の壁がある場合や、連続窓のように複数の建具を合成する必要がある場合は、それぞれにHostを設定するのは手間がかかるので、建具枠で壁を切抜き、その中に建具を配置する方法で作成する。

こうすれば、建具枠と額縁に分けて見付(H1)を設定することもできる。
(例えば額縁を25とし、建具を40とすることができる。)

内壁だけ表示の状態で作業する。
階段室内の壁面を選択し、作業平面を移動する。
扉の枠を作成するので、simple door、1260x2030、枠見付H1 30、枠見込W1 285(実際は275であるが画面を見て調整)、オフセットは0で仮配置し、移動ツールで隅に移動する。

A通り、B通りは内側から配置すれば、壁の隅にスナップできる。
A通りは、simple door 3840x2430、B通りはFixed 3840x1230 腰壁があるので敷居高さを800にする。
見込寸法285、オフセット0は最初の建具と同じ。

■建具枠で壁を切抜く方法
建具枠と壁厚がそろっていることは、上面ビューでワイヤーフレーム表示にすると確認することができる。

まず、作成したsimple doorとFixedをダブルクリックして、コンポーネント内訳を表示し、DoorとGlassを削除して枠だけを残す。

壁を切抜くためにGLと1Fのオブジェクト表示にして、ホストプロパティでリンクを表示して、外壁と下部の腰壁を選択する。
この段階では内壁は外壁に隠れているので、そのままOKで戻る。
再表示して、枠開口から内壁が見えるようにしてからHostのリンクで内壁を選択しOKで戻る。再表示すると壁の切抜きができている。
外壁の開口について、同じ操作を繰り返して壁の切抜きを完成する。

■階段部分に親子開き扉を配置する。
外側から、simple door 1260x2030を建具枠の外隅にスナップして配置する。
ドアをダブルクリックしてコンポーネント内訳を出し、下段のSketchをダブルクリックすると建具ベースラインのSketcherに移動する。

simple doorはドアのラインがないので、2枚の扉の輪郭を作図し、水平垂直距離拘束で枠との隙間寸法を記入する。
各隙間は4mmとする。扉は800+400=1200とするので、枠からは800-4/2=798とする。

再度コンポーネント内訳に戻り、コンポーネントのDoorを選択し編集を選択しクリックして内訳を出す。
名前はそのままで、ワイヤーをWire2(作図した800幅の扉)に変更する。その他はそのままで作成/更新をクリックして戻る。

次のドアもDoorを選択し編集をクリックして内訳を出す。
名前をDoor01に変更する。(名前を変えないとDoorに上書きされる。)
ワイヤーをWire3(小さい方の扉)に変更する。

ビューで枠の縦線を選択した状態で、ヒンジ部分をクリックすると変更になる。
オープニングモードはもとの設定と逆方向なので、「inv」の有無が逆になるように設定する。
BIMにもどったら、建具のプロパティでOpeningを100%、Symbol Planをtrueにすれば、扉の開き状態を確認できる。

■窓の合成
複合窓の部分は、FixedとOpen 2-Pane、Open 1-Pane、Sliding 2-Paneを組み合わせて作成する。
Fixedは、960x2030、枠見込100、オフセット0
Open 2-Paneは、1920x203、框(H2)100、枠見込100、オフセット0
Open 1-Paneは、960x400、框(H2)50、枠見込100、オフセット0
Sliding 2-Paneは、1920x1230、框(H2)60、枠見込100、扉見込(W2)30、オフセット20とする。
同じものは、コピーで作成してもよい。

2Fと3Fも同じ方法で作成できる。
扉サイズが1750x2030になることと、枠見込が250になることが変更点である。


■屋上建具を作成する前に、屋上の防水押えと笠木を作成する。
RFオブジェクトだけを表示にして、作業を進める。
RFスラブ面を選択し、作業平面を移動する。(RFをダブルクリックでもよい。)

屋上防水の範囲を長方形で作成する。
防水押えのスラブと立上り壁のベースラインにするために、RectangleをダウングレードでWireに変換する。
作成したWireをスラブ作成ツールでスラブに変換する。Rectangleは反時計回りなのでスラブは上方向に作成されている。プロパティで厚さ100に変更する。

スラブの下層にあるWireを選択し、壁ツールをクリックして壁に変換する。
プロパティで基準AlginをRight、Heightを500、Widthを100に変更すると、屋上壁の内側に立上り壁ができる。
Placementで上方向に100移動して、壁の天端を他の立上り壁とそろえる。

笠木は、立上り壁の天端の面を選択し作業平面を移動してから、外側(外壁外側)のラインの角にスナップして長方形を作図する。さらに一番内側の立上り壁のラインの角をスナップして長方形を作図する。

2つの長方形Rectangleを選択した状態で、ダウングレードをクリックするとCutオブジェクトができて中空の長方形になる。
これを壁ツールで立上げて、高さを50に変更して笠木とする。

笠木を壁オブジェクトにしておくと、建具と交差する部分を切抜きできるので、便利である。

■屋上に出る部分の建具を作成する。
RFの内壁とRF階段オブジェクトを表示にする。

モデルを見ると、階段を受ける柱が扉に支障しているので、柱の高さを床まで400に変更する。
階段オブジェクトは非表示にして、階段室の内側壁面を選択し、作業平面を移動する。
壁切抜きの枠を作成する。
外壁の床に隙間があるので、床にも枠ができるように、Fixedを使う。
枠は810x2060(2000+30x2)
枠見込は467.5(ビューで見て調整)、オフセット0とする。

面に仮配置した上で、壁の隅に移動する。Placementで上方向に370(400-30)移動して開口の位置を決める。
扉のGlassを削除して枠だけ残す。
ビューを回転して外側から見て、Hostプロパティで外壁や立上り壁、内壁を切抜く。
この部分は、外壁や立上り壁が重なっているので、一度では切抜くことができない。Hostリンクの設定と再描画を繰り返して、枠内に壁がなくなるまでホストの設定を繰り返す。

開口部にsimple doorを配置する。

最後に、屋上の床面をクリックして作業平面を移動し、扉の前の段部分を長方形1000x1200で作図する。Extrudeで上方向に200押出して完成する。


■ベランダの手摺は、フレームツールで作ってみる。
2Fの腰壁オブジェクトだけを表示して、壁面をクリックして作業平面を移動する。
Sketcherで、壁の線を外部リンクして、これを基準に手摺芯を作図する。
手摺はパネルタイプとした。

交差部分は、直角方向との関係を考えて持出し寸法を決める。
今回はすべての部材を40x40と考えたので、ひとつのSketchで作図している。
部材サイズを使い分けしたいなら、Sketchも別々に作成する。

正面と、側面のSketchができたら、位置が壁面になっているので、Placementで壁中心になるように移動する。
側面のSketchを反対側の側面にコピーすると、Sketchで外部リンクを使っているので、リンク先のオブジェクトも一緒にコピーされるが、このオブジェクトは必要ないので削除する。

手摺の位置が壁中央にセットできたら、Sketchをもとにしてパネルの長方形Rectangleを作図する。
(この時、作業平面をそれぞれの近くにある平行な壁面に移動しておけば、スナップがうまく機能することが多い。)
パネルにMaterialを設定したい場合には、構造体オブジェクトに変換する必要があるが、ここでビュータブのプロパティで色と透明度を設定するだけにしておく。

手摺部材をフレームツールで変換するために、部材の断面を作図する。場所はどこでも構わないので、40x40の長方形Rectangleを作図する。
手摺芯の図Sketchと断面Rectangleをまとめて選択し、フレームツールをクリックするとSketchが手摺部材に変換される。
複数の部材を使いたい時は、部材別にSketchを分けて作成し、それぞれの断面オブジェクトを作図してフレームツールで変換する。

3Fの手摺は、2Fの部材をコピーする。
この時にも外部リンクのオブジェクトができるが、必要ないので削除してよい。

これまでのモデリングを階別に表示すると図のような状態になる。
外壁は作業中は透明度を上げていたが、透明度0に戻してある。

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