10.4+屋内の壁 多層壁とマルチマテリアル

 内部の壁は単線で作図するだけなら何も問題はないが、鉄骨造では、仕上と下地の線がないと何のことかわからない図になってしまうので、ここでは仕上を含めた内部の壁を作成する方法を検討する。

 屋内の壁は、作成する順序を考えないと、修正が困難になり最初から作り直すことにもなりかねない。鉄骨造の場合は鉄骨部材の廻りの仕上げなども必要となるのでRC造よりも複雑である。

今回は、柱梁廻りの仕上、防火区画等の主要な壁、外壁面の内張り、簡易的な間仕切り壁の順で作成する。(壁はLGS下地65+ボード貼り 片面25(GB12.5*2)とする。)
壁オブジェクトの数が多くなるので、各部分ごとにグループを作成し整理すれば見やすくなる。(1F壁柱、1F壁区画、1F壁外面、1F壁間仕切のようにグループを作成する。)

下地壁はカーテンウォールツールを使うとスタッドを表示できるが、取合い部分やピッチの細かい調整が必要になるのでここでは表示しない。

■多層壁とマルチマテリアル
仕上のある壁を構成する方法は、多層壁とマルチマテリアルがある。

多層壁はひとつのベースラインの上に複数の壁を構築するもので、壁のレイヤーが独立しているので、レイヤー別に高さやPlacementを設定することができる。例えばボードだけを上に伸ばすようなモデリングができる。
多層壁は複数の壁を作成しオフセットで位置を調整するので手間がかかるし、壁オブジェクトの数も増える。

マルチマテリアルはひとつの壁に対して複数のレイヤーを割り当てるのでレイヤー別に高さの設定はできないが、マテリアルの構成を変えることで自動的に壁の厚さや構成を変更することができる。しかも壁を結合すると仕上も含めて自動処理ができる。(ただし、マルチマテリアルは壁の結合が複雑になると、正しく表示されない。)
マルチマテリアルは複合壁オブジェクトを作成して、壁のプロパティに設定する必要があるが、壁の配置は一度でよいので、仕上を含む壁はマルチマテリアルを優先的に使いたい。

いずれにしても、内壁と構造フレームの取合いを厳密に考えるとモデリングが複雑になってしまうので、必要な図面に関係のない部分を適当にまとめる見極めが大切である。

内部の壁も他の壁と同様に、起点終点2点指示で作成したいが、データが多くなるとスナップに失敗することが多くなるので、ベースラインを先に作図し、壁に変換することにした。

今回は、ベースラインは基本的には対象となる柱面または壁面に沿って作図し、壁の位置はオフセットで調整する。また、下地が基礎や梁を貫通する部分ができるが、仕上ラインに関係しない場合はマルチマテリアルの壁で作成する。

マルチマテリアルやオフセットを使う場合は、線の方向によって左右に影響が出る。(ベースラインの終点から起点を見た方向で左右の判断をする。)


■マルチマテリアルを準備する
壁のMaterialプロパティを設定するためには、マテリアルを登録しておく必要がある。
ツールバーのマテリアル作成ツールをクリックすると、「建材の品質表示」という窓が開く。
ここは個別のマテリアル情報を設定する画面であるが、今は細かい設定をしないのでそのままOKで閉じると、モデルタブにMaterialsオブジェクトと下層にMaterialができている。

モデルタブにMaterialsがある時に、マテリアル作成ツールをクリックすると「マテリアルを選択」の窓が開く。下欄の「新しい複合マテリアルを作成」をクリックしてマルチマテリアルの定義に移動する。

スタッド壁とするので、名前はStWall-Sとする。
コンポジションは、下の追加をクリックして必要な数のレイヤーを作る。
ここで細かく設定すればよいが、今回は仕上げラインを作成したいだけなので、名前は新規のまま変更しない、マテリアルはダブルクリックしてMaterialを選択する。
厚みは材料の厚さを設定する。片面仕上として65、25(下地、ボード)を記入する。

両面ボードの場合も作成する。
マルチマテリアルの名前をStWall-Wとし、コンポジションの厚みを25、65、25とする。

プロパティにマルチマテリアルを設定すると、壁厚よりもマルチマテリアルの厚みの方が優先する。

(コンポジションの厚みにマイナスの数値を入力すると、空白のスペースを作成できる。ボードとボードの間を空白にしたければ、マイナスの数値を入れればよい。)
(厚さの違う壁に仕上を適用したい場合は、下地部分の厚さを0.0にすれば、壁厚から仕上げを引いた残りの厚さが下地に適用される。)

■柱廻りの仕上
1Fは柱脚にコンクリート柱が立ち上がっているので、壁下地と重なってしまうが、作成を簡単にするためマルチマテリアルで作成する。
今回は作成しないが耐火被覆などで高さを細かく設定したければ多層壁にすればよい。

鉄骨柱廻りの仕上面は、1Fの柱脚コンクリート面はGB12.5 GL工法で仕上げ厚30とすると、柱600/2+30=330となる。
鉄骨柱部分はこれに合わせると、柱300/2+クリアランス90+65+25=330となり、鉄骨面とのクリアランスは90である。

GLと1Fを表示にして、作業平面は1Fに移動する。
連続線で各柱の角をスナップして、ベースラインを作成する。スナップする順は反時計回りでそろえる。
ベースラインをまとめて選択し、壁オブジェクトに変換し、MaterialプロパティをStWall-Sに設定する。
基準はLeft、高さは2Fスラブ下まで3400-150=3250、オフセットは90とすれば柱の側面に壁ができる。

■区画壁
階段廻りの区画壁は、両面張りボード25+65+ボード25、外壁側は片面張り65+25とする。梁側面などのボードだけを立ち上げる部分があるので、多層壁で作成する。
多層壁はMaterialプロパティは設定しない。

壁は梁の側面に沿って作成するので、2Fの梁も表示する。作業平面は1Fのまま。
梁と壁の交点をスナップして、2通りのベースライン、階段廻りの横ラインと外壁面は梁の交点、梁と壁の交点をスナップして、ベースラインを作図する。

2通りのベースラインLineを選択し、壁に変換する。壁の下層にLineが移動するので、そのLineを選択し、壁に2回変換する。
中心の壁のプロパティは、基準は中央のまま、高さは梁下まで3400-150-400=2850、壁厚は下地65とする。

左の壁(3通り側)は、基準はLeft、高さは梁下まで3400-150-400=2850、壁厚はボード25とする。オフセットは下地65/2=32.5とする。

右の壁(1通り側)は、基準はRight、高さは2Fまで3400、壁厚はボード25、オフセット32.5とする。
右のボードだけが、梁の側面まで立ち上がった状態になる。


1-2通り間の横方向のベースラインLine001を選択し、壁に変換し、さらに壁の下層のLine001を選択し、壁に2回変換する。

中心の壁のプロパティは、基準は中央、高さは梁下まで3400-150-300=2950、壁厚は下地65とする。

左の壁は、基準はLeft、高さは梁下まで3400-150-300=2950、壁厚はボード25、オフセットは32.5とする。

右の壁(階段側)は、基準はRight、高さは2Fまで3400、壁厚はボード25、オフセットは32.5とする。

1通りの外壁側のベースラインLine002を選択し、壁に変換し、さらに壁の下層のLine002を選択し、壁に回変換する。

中心の壁のプロパティは、基準は中央、高さは梁下まで3400-150-400=2850、壁厚は下地65とする。

右の壁(階段側)は、基準はRight、高さは2Fまで3400、壁厚はボード25、オフセットは32.5とする。


■外壁面内張り
外壁面の内張りは、梁下までとしマルチマテリアルで作成する。
1Fは、腰壁の壁面からクリアランス35+マルチマテリアル(65+ボード25)とする。

柱仕上の端点をスナップして、ベースラインを作図する。
ベースラインをまとめて選択し、壁に変換する。
壁のMaterialプロパティを片面StWall-Sに設定する。
基準はLeft、高さは梁下まで3400-150-400=2850、オフセットは35とする。

■間仕切り壁
天井まで(2400)でよいので、マルチマテリアル(ボード25+65+ボード25)とする。
壁芯を梁に合わせるので、ために、梁芯図Sketch001を表示し、ガイドにしてベースラインを作図する。

ベースラインを選択して壁に変換する。

縦の壁のMaterialプロパティを両面StWall-Wに設定する。
基準は中央、高さは天井まで2400とする。

縦の壁のMaterialプロパティ片面StWall-Sに設定する。
片面仕上なので、壁芯が下地中心とずれているので、基準をRightにして、オフセットー65/2=-32.5とマイナスにして逆方向に移動して、壁芯と下地中心を合わせる。高さは天井まで2400とする。

■2Fから上の壁
2Fは1Fの壁をコピーしてプロパティを変更する。
コピー&ペーストで作成し、Placementで上方向に3400移動する。
Ctrl+Cを押したときに、オブジェクト選択の窓が開くが、その中にマルチマテリアルが含まれていることがある。Materialsとマルチマテリアルはコピーする必要がないのでチェックを外してOKする。

1F壁柱グループの中の壁オブジェクトをまとめて選択し、コピー&ペーストする。マルチマテリアルの壁なので、すべてまとめて選択し、プロパティを変更する。
Materialと基準は変更なし、高さはスラブ下3000-150=2850に変更する。
柱面からのクリアランスは35に変更する。

1F壁区画グループの中の壁オブジェクトをまとめて選択し、コピー&ペーストする。多層壁なので、壁をひとつずつ変更していく。
Materialと基準、厚さは変更しない。
高さは、梁下までは3000-150-350=2500、または3000-150-300=2550に変更。3Fまでは3000に変更する。

柱のオフセットを少なくしたので、壁と柱仕上の間に隙間ができている。2Fの区画壁を非表示にして、壁の下層のベースラインを表示して、線を選択し延長ツールで壁仕上の位置までベースラインを延長する。
全ての隙間の処理が終わったら、ベースラインは非表示にして壁を表示すると柱との隙間は
なくなっている。

1F壁外面グループの中の壁オブジェクトをまとめて選択し、コピー&ペーストする。マルチマテリアルの壁なので、すべてまとめて選択し、プロパティを変更する。
Materialと基準は変更なし、高さは梁下まで3000-150-350=2500に変更する。
オフセットは、ALC面からクリアランス50とすると、柱外面とそろうので、0に変更する。

壁と柱仕上の間の隙間は、区画壁と同様にベースラインを表示し、柱仕上げまで延長する。ベースラインを非表示に戻すことと、壁を表示して確認することは同じである。

1F壁間仕切グループの中の壁オブジェクトをまとめて選択し、コピー&ペーストする。多層壁なので、壁をひとつずつ変更していく。
Materialと基準、厚さは変更しない。高さも、天井2400は同じなので変更しない。

間仕切壁も隙間ができているので、仕上面まで延長する。

ベースラインを編集すると、起点と終点の関係が逆になって壁の位置や構成が反転することがある。その場合は基準のLeftとRightを変更すれば元の状態に戻る。


3Fの壁は2Fをコピー&ペーストで作成し、Placementで上方向に3000移動する。

壁位置は2Fと同じなので、Materialと基準、厚さは変更しない。
高さはRFまでは2Fと同じ3000のまま、梁下までは3000-150-300=2550に変更する。


PHの壁は3Fの壁で該当する部分を選択し、コピー&ペーストで作成し、Placementで上方向に3000移動する。
上の階までの高さとしている壁は、PHでは3000-150=2850に変更する。

2通りの柱の仕上は、1通りを鏡面複写で作成する。

1通りの柱仕上を選択し、コピー&ペーストで鏡面コピーのもとになるオブジェクトを作成する。
(鏡面コピーすると、もとのオブジェクトは鏡面オブジェクトの下層に移動するので、表示非表示の制御する手間が増えるので、鏡面コピーのために別のオブジェクトを用意する。)
鏡面複写ツールをクリックして下の壁線の中点からShiftキーを押しながら垂直の鏡面の軸を指定すると、2通りに柱がコピーされる。
 

以上で、内部の壁が完成する。壁と壁が重なっている部分もあるので、正確な形状が必要ならベースラインを調整する。

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