10.4鉄骨造の外壁と屋根、床

外壁(ALC)と床スラブを作成する。
壁は技術ドキュメントでもSketcherでベースラインを作成する方法が紹介されているようにSketchをベースラインにして作成すると、結合部の処理に気を使わずに一度に作成できて、かつ変更が容易になるというメリットがある。

しかしBIMソフト(Revit)や壁ツールのある3DCADでは、壁の始点終点を指定して壁を構築する方法が一般的であるので、その方法で作成してみる。
FreeCADではこの方法で作製した壁でも下層にWallTrace(Sketch)というサブオブジェクトができて、Sketchをベースラインにした壁と同じデータ構造が得られるので、後でSketcherで編集することも可能である。

壁を作成する前に、FreeCADの設定で自動的に壁の結合ができるようになっていることを確認しておく。
編集メニューの最下段の設定をクリックし、設定オプションを出す。
Archの全般的な設定タブの中の、□壁の自動結合と □可能な場合には...結合をONにする。
□Move with hostをtrueもONにする。(レベル移動に伴う構造体オブジェクトの移動が可能になる。)


■外壁の作成
外壁はALC厚さ100とする。ALCの水平ジョイント位置はフロアーレベルとする。
柱外面が通り芯+150であるから、外壁外面は柱300/2+クリアランス50+ALC100=300となる。(基礎で腰壁を作成するときに、壁面と一致するように設定してある。)

WPproxyのZ値を0に変更し、ダブルクリックして作業平面を移動する。
レベルオブジェクトと同じ高さの作業面とするときは、WPproxyでなくレベルオブジェクトをダブルクリックしても、同じ高さに作業面を移動することができる。

作業ビューに1F柱を表示して、壁の作成を始める。
左上から柱の角をスナップして4辺の壁を作成する。
FreeCADでは、作成済みの壁に次の壁を結合するときは、もとの壁上の点にスナップしないと、別の壁と判断されて結合できないことがある。
壁を作成して結合する場合には、ビューとモデルタブを確認し、必要のないオブジェクトができたり、結合できてない場合はCtrl+Zで戻ってやり直すことも必要である。

1Fの壁は壁厚100、高さ3500-腰壁900=2600、基準は右面として上面ビューで配置する。
最初の壁の始点終点として柱角をスナップ、次の壁は始点として最初の壁の端点をスナップし、終点は次の柱角をスナップする。これを4回繰り返して外周の壁を作成する。

壁はすべて結合してひとつの壁オブジェクトになっている。

壁のプロパティのオフセットを50mmにすると、壁が外側に50mm移動して柱との間にクリアランスを設けることができる。
(壁オプションの配置の基準を右面または左面にするとオフセットが有効になり、ベースラインからずらすことができるようになる。)

1Fの壁をコピー&ペーストして、2F3Fの壁を作る。
1Fの壁はPlacementのZ値で上方向に900移動する。(高さは2600のまま)
2Fの壁はPlacementのZ値で上方向に3500移動する。高さは3000に変更する。
3Fの壁はPlacementのZ値で上方向に6500移動する。高さは3000に変更する。


次にRFの壁を作成する。
WPproxyのZ値を9500に変更し、ダブルクリックして作業平面を移動する。
3Fのオブジェクトを表示にする。(ダイヤフラムは非表示の方が柱が見やすい)

PH部分の壁を作成する。H3600
1Fと同様に4辺の壁を作成し、壁オブジェクトのオフセットプロパティを50mmにする。

屋上部分の壁を作成する。H600
上、右、下の順で壁を作成し、壁オブジェクトのオフセットプロパティを50mmにする。

正面ビューで見ると、壁が重なっているので壁の長さを修正する方法を考える。

屋上部の壁オブジェクトの下層にあるWallTraceをダブルクリックすると、Sketcherに移動する。
通りの軸線を基準にして線の位置を修正したいので、外部オブジェクトリンクで軸線を指定する。
軸線と壁ラインの端点の距離を水平距離拘束で300(外壁面)に固定する。
BIMに戻ると、壁の重なりが修正されている。

作成した壁オブジェクトの名前を 壁-1FW、壁-2FW、壁-3FW、壁-RFWa、壁-1RFWbに変更し、各レベルオブジェクトの下層に移動する。


ベランダの床から下への下り壁も作成しておく。2Fは高さ1100、3Fは高さ750、天端がFL+100となるように設定する。

WPproxyのZ値を3500に変更し、ダブルクリックして作業平面を移動する。
2Fのオブジェクトと2Fの外壁を表示する。

ベランダ廻りの壁を作成する。厚さ100 高さ1100とする。
梁と壁の交点や梁の端点をスナップして、左、下、右の順に壁を作成し、壁のオフセットプロパティを50mmにする。

壁オブジェクトをコピー&ペーストして、3Fの壁を作る。
2Fの壁はPlacementのZ値で下方向に1000移動する。高さは1100のまま。
3Fの壁はPlacementのZ値で上方向に3000-650=2350移動する。高さは750に変更する。

ベランダ壁の名前を 壁-2FWvと壁-3FWvに変更し、レベル2Fとレベル3Fの下層に移動する。
壁や床のオブジェクトを作成すると、柱梁の構造フレームが見えなくなるので、オブジェクトのビュータブ、Object Styleの中のTransparencyで透明度を60程度にしておく方がよい。


■床スラブの作成
BIMソフトのRevitでは、各部屋の床の範囲を自動検出してスラブを作成してくれるが、FreeCADにはその機能がないので、床の範囲を作図して床ツールで構造体オブジェクトに変換する必要がある。
床ツールのベースラインにはSketchも使えるが、拘束で作図するのは手間がかかるので連続線を使って上面ビューでスナップしながら床範囲を作成する。軸線とリンクしたいときは、床範囲の連続線WireをSketchに変換して、拘束関係を設定することができるが、今回は省略する。


WPproxyのZ値を0に変更し、ダブルクリックした時に作業平面がZ=0に戻るようにする。
Sketch001(梁の位置図)とSpreadsheetは使わないので、デフォルトのサイトの下層に移動しておく。

1Fの床を作成する。
WPproxyをダブルクリックしてビューのモデルを一度非表示にしてから、軸線とGLの柱(bsC)と壁(bsW)を表示する。
レベル1Fをダブルクリックして作業平面を移動する。
スナップは、端点スナップ、交点スナップ、WPスナップをONにする。交点スナップしたいときに、端点に移動して交点が取れないときは、一時的に端点スナップをクリックしてOFFにする。(指定したい交点にその線の端点が近いと、交点スナップできないことが多い)

1Fは柱と腰壁の内側が床範囲になるので、柱と壁の交点、柱の角をスナップして連続線Wireを作図する。
床ツールで下方向押出しとなるように、連続線Wireは時計回りにポイントを指定する。

床範囲のWireができたら、床ツールでSlubオブジェクトに変換する。
プロパティで厚さHeightを200とする。(1Fから梁天端までが200なので、今回はスラブ厚さを200とする。)
名前をSlub-1Fに変更して、1Fの下層に移動する。


2F、3Fの床を作成する。
軸線と2Fを表示にする。2Fのダイヤフラムは非表示にする。
レベル2Fをダブルクリックして作業平面を移動する。
階段部分は後で作成するので、除外できるように範囲を長方形Rectangleで作図する。

2Fは鉄骨梁の上に床スラブを作成するので、床から柱部分を切抜く形で床範囲を連続線で作図する。

ベランダ部分の床は、梁端部を結ぶ形で床範囲を連続線で作図する。

床範囲のWireができたら、床ツールでSlubオブジェクトに変換する。
プロパティで厚さHeightを150とする。(2Fから鉄骨梁天端まで150としている。)
ベランダ部分のSlubオブジェクトをPlacementで下方向に100移動する。

屋内とベランダのSlubオブジェクトを選択し、コピー&ペーストで3FのSlubオブジェクトを作る。
3FのSlubオブジェクトをPlacementで上方向に3000移動する。

2Fスラブの名前をSlub-2F、Slub-2Fvに変更して2Fの下層に移動する。
3Fスラブの名前をSlub-3F、Slub-3Fvに変更して3Fの下層に移動する。


RFの床を作成する。
軸線と3F、RFを表示にする。階段部分のRectangleは表示にする。
レベルRFをダブルクリックして作業平面を移動する。

RFは屋内と屋上部分に分割して床範囲を連続線で作図する。屋上部分は柱がないので、柱の切り抜きは必要ない。

床範囲のWireができたら、床ツールでSlubオブジェクトに変換する。
プロパティで厚さHeightを150とする。(RFから鉄骨梁天端まで150としている。)
RFの床ができたら、階段部分のRectangleは削除する。

RFスラブの名前をSlub-RFa、Slub-RFbに変更してRFの下層に移動する。


PHの床を作成する。
軸線とRF、PHを表示にする。
レベルPHをダブルクリックして作業平面を移動する。

PHは柱の切り抜きが必要ないので、4隅の柱角を結んで連続線で作図する。

床範囲のWireができたら、床ツールでSlubオブジェクトに変換する。
プロパティで厚さHeightを150とする。(PHから鉄骨梁天端まで150としている。)

Slubオブジェクトの名前をSlub-PHに変更し、PHの下層に移動する。



屋上床周辺の立上り壁を作成する。
PHの立上り壁

軸線とPHを表示にする。
レベルPHをダブルクリックして作業平面を移動する。

PHのSlubの上面faceを選択し、Facebinderツールをクリックして、面を抽出する。
(モデルタブでSlub-PHを選択すると、オブジェクト全体を選択するので、Facebinderで面を抽出することができない。作業ビューで抽出したい面をクリックして選択する。)
作成したFacebinderオブジェクトをdowngradeして、Wireに変換する。
Wireを選択し、壁ツールでをクリックして壁オブジェクトに変換する。
プロパティで基準をLeft、Heightを600、Widthを150に変更する。
名前を壁-PHrに変更してPHの下層に移動する。


RFの立上り壁
軸線とRFを表示にする。
レベルRFをダブルクリックして作業平面を移動する。

屋上部分のSlubオブジェクトの上面faceを選択し、Facebinderツールをクリックして、面を抽出する。
作成したFacebinderオブジェクトをdowngradeして、Wireに変換する。
Wireを選択し、壁ツールでをクリックして壁オブジェクトに変換する。
プロパティで基準をleft、Heightを600、Widthを150に変更する。

名前を壁-RHbrに変更してRFの下層に移動する。


2Fベランダの立上り壁
軸線と2Fを表示にする。
レベル2Fをダブルクリックして作業平面を移動する。

ベランダのSlubオブジェクトの上面faceを選択し、Facebinderツールをクリックして、面を抽出する。
作成したFacebinderオブジェクトをdowngradeして、Wireに変換する。
Wireを選択し、壁ツールでをクリックして壁オブジェクトに変換する。
プロパティで基準をleft、Heightを200、Widthを150に変更する。

できた壁オブジェクトをコピー&ペーストして3F壁オブジェクトを作り、Placementで上方向に3000移動する。

名前を壁-2Fvr、壁-3Fvrに変更して2F、3Fの下層に移動する。

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