09.5建築 平面断面オブジェクトを作成する

 BIMアプリケーションは、モデルの作成と変更が簡単なところが特徴であるが、3Dモデルに連携した二次元図面を作成できることも重要な要件である。

BIMは、モデルと2D図面がリンクしていることで、常に図面間の整合性を保つことができるとともに、構造、設備、コストを含めたデータの一括管理を可能にするシステムを構築している。ただし実際には、現在のBIMは高額なソフトでも、図面に関しては詳細図レベルでリンクするところまでは完成していない。

BIMとしての機能を求めるなら、モデルと図面のリンクはどうしても必要となるので、3Dモデルを2D図面に変換し、いつでも使うことができる方法を検討しておきたい。

Revitのような高額なBIMでは、各階平面は2D図面として表示されるので、図面を見ながらモデリングすることが可能になっている。断面図や3Dビューも、いつでもどの位置でも見ることができるので、モデルと2D図面がスムーズにつながっている。

(どちらかと言えば、2Dで柱壁などの部材を配置しながら図面を作成していくと、モデルができてくるイメージで、形を見ながら編集をする3DCADとは少し進め方が違っている。)

FreeCADでは、モデリング作業中の上面ビューや正面ビューがそのまま2D図面になることはないので、図面の形式を整えるために、手を加える必要がある。TechDrawワークベンチはモデルから図面を切出すことのできるツールであるが、図面を編集してモデルにフィードバックすることはできないので、モデルを正確に作成することが重要になる。


■平面図断面図の作成のためのツール

3Dモデルから直接2D図面を抽出するために、FreeCADのBIMワークベンチでも図面を作成するための機能を提供している。

モデルから2D図面を作成することに限れば、BIMワークベンチにあるツールでほとんどの作業は完了する。後は、TechDrawワークベンチで図面のレイアウトを整えるだけである。

BIMワークベンチには、モデルを2D図面に変換するために次のツールがある。

Arch SectionPlane.svg 断面オブジェクトの作成:
切断面を作成し、断面オブジェクトをモデルタブに追加する。
断面オブジェクトは、平面図、断面図として使用できる。切断面を建物の外に移動すれば、立面図にすることもできる。

TechDraw PageDefault.svg ページ:(TechDrawと共通)
テンプレート(図面サイズ、図枠)を選択し、各図面を配置レイアウトするためのページ(用紙)オブジェクトを作成する。ページ上の編集はTechDrawのツールを使う。

TechDraw ArchView.svg ビュー:(TechDrawと共通)
BIMワークベンチで作成した断面オブジェクトをビューとしてページに挿入する。

作業画面をそのままビューとして挿入することもできるが、それにはTechDrawの別のツールを使う必要がある。

ドラフトShape2DView.svg Shape 2D View
選択した3Dオブジェクトを作業ビュー視線方向に投影して2Dビューオブジェクトを作成する。作成した図形は、XY平面に表示される。断面オブジェクトをXY平面に投影することもできる。

その他に、寸法、テキスト、注釈ツールなどもあるので、TechDrawのビューに変換する前に図面の形式を整えることができる。
(断面オブジェクトをTechDrawのビューに変換すると、ページ上では寸法を記入することができなくなる。)


BIMデータとして、もう一つ重要な点は、モデルと図面のリンクを崩さないこと(モデルと図面が常に一致していること)である。図面に線を描き加えたり部分的な納まりを修正するために、エクスポートして他のソフトに移したデータはBIMとのリンクは失われている。したがって、どこまでをBIMで設計するかを見極めておくことが重要である。

実際の作業では、詳細図まですべてをBIMで作図することは不可能である。設計に変更があった場合にモデルにフィードバックできる範囲まではBIMで作成し、詳細は2DCADに任せることにして、BIMでは企画、基本設計、一般図作成程度までとするのが現実的ではないだろうか。


■断面オブジェクトの作成
 
これから、FreeCADで2D図面を作成する方法を検討していく。モデルは07.RC造BIMモデリングで作成した建物を使って説明する。図面化することを考慮しないで形の見え方だけを優先して作成したモデルなので、図面化すると問題が続出してなかなか面白い。

Arch SectionPlane.svg 断面オブジェクトの作成を使って、平面図、断面図のオブジェクトを作成する。
断面作成ツールは、断面を作成したいオブジェクトを選択し、ツールをクリックして断面オブジェクトを作成する。

動作確認を行うために、建物を1Fのみ表示、その他は非表示にして、作業平面は上面、3Dビューで作業する。

① 1Fの柱だけを選択し、断面作成ツールをクリックする。
ビューに柱高さの中間位置に切断面ができる。モデルタブにSectionオブジェクトができる。

② 1Fの壁だけを選択し、断面作成ツールをクリックする。
モデルタブにSection001オブジェクトができる。実際は切断面もできているが、同じ位置なので重なって見えない。

③ 1Fオブジェクトを選択し、断面作成ツールをクリックする。(1Fのすべてのオブジェクトを選択したことになる。)
モデルタブにSection002オブジェクトができる。実際は切断面もできている。


モデルタブのSectionオブジェクトをダブルクリックすると、モデルタブがタスクタブに変わり断面平面の設定オプションが表示されるが、断面図そのものは見ることができない。
(Sectionオブジェクトは、TechDrawのページにビューとして挿入しないと見えない。)

これを作業ビューで見るためには、断面オブジェクトをドラフトShape2DView.svg2D投影ツールでShape2DViewオブジェクトに変換する必要がある。
各断面オブジェクトを順に選択し、2D投影ツールをクリックしてShape2DViewオブジェクトに変換すると、XY平面に投影されるが、すべて重なっていて区別がつかない。
各ビューを移動して断面図の状態を確認する。

①柱、②壁を選択したものは、それぞれ選択部材の断面が作成されている。
③1Fを選択したものは、柱壁の断面と、見下げのベランダ手摺も作図されている。



■平面図、断面図のためのオブジェクトの作成

断面オブジェクト作成ツールは、オブジェクトを選択してからツールをクリックすることで、自動的にオブジェクトの大きさに合わせた切断面を、オブジェクトの中心合わせで生成する。
オブジェクトを選択しないでクリックすると、XY平面に切断面ができるが、位置とサイズが合わないので、プロパティで調整することになる。

切断面の位置は、水平面で作成したものを移動、回転して、必要な箇所に移してもよいが、作業平面を変更することで、作業平面に平行な切断面を作成することができる。

作業平面を上面にすれば平面図、前面か側面にすれば断面図のオブジェクトを作成できる。
切断面は移動ツール、placementで移動して位置を調整することができる。

断面オブジェクトのビュータブのプロパティCut Viewをtrueにすると、切断面から片側だけの表示に変更することもできる。(断面透視図などにも使える。)


次回は断面オブジェクトを使って、平面図、断面図をレイアウトする方法を検討する。

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