09.1Sketcher 拘束とパラメトリック

 FreeCADはパラメトリックなCADであるが、Sketcherはそれを実現するための機能を実装している。Sketcherは単なる2D作図ツールではなく、拘束やリンクという作図条件を含む特殊なオブジェクトを作成するもので、Sketcherを理解するためには拘束を知ることが必要である。
 拘束の機能については技術ドキュメントを読んでもらえばよいが、「05.3Sketcherの使い方(1)」にも少しまとめてある。

ここでは、拘束によって図形がどのように変形するのかと、リンクによる変形のイメージを見ておきたい。


■長方形を作図する
 BIMの画面で、作業平面を上面、ビューを全体表示でグリッド全体を画面に表示した状態で、スケッチ作成ツールをクリックしてSketcherに移動する。

まず、直線ツールで長方形の辺になる直線を4本、適当に作図する。

① 線をつなぐために、線の終点と次の線の始点を選択し、一致拘束をクリックする。
 順につないでいくと、連続線で作図したような形状になる。
(連続線は、最初から線の終点と次の始点を一致拘束した状態になっている。一致拘束はビューに拘束のマークは出ない。)

② できた不規則な四角形の各コーナーを直角拘束すると、長方形ができる。
 最後のコーナーは直角拘束できない。これは、他の3コーナーが直角であれば、最後のコーナーは四角形なら直角になることが決まっているからである。
(長方形は、4辺のコーナーがつながり、それぞれが直角であると定義できる。)

③下の辺を水平拘束すると、縦横が水平垂直な長方形になる。

④ ばらばらの線を水平拘束、垂直拘束すると、線が縦横に整列するが、端点がつながっていない。

⑤ コーナーの2点を選択し、一致拘束をクリックするとコーナーがつながって長方形になる。縦横は水平垂直でコーナーは直角になっているので、③で作成した長方形と同じ条件になる。
垂直距離拘束、水平距離拘束で長さを固定すると、サイズが変わらない形状が完成する。
(サイズを変える時は距離拘束の数値を変更する。)

拘束が完了して図形が変形しなくなると、図形は緑表示に変わるはずであるが、ここで拘束が完了しているのに表示が変わらないのは、形状は固定でも位置が自由に移動できるからである。
図形の位置を(0,0)との関係で拘束すれば緑表示に変わる。


■平行四辺形を経由する
① 線を一致拘束でコーナーをつなぐ。

②対面の2辺を選択し、平行拘束をクリックすると、平行四辺形になる。

③平行四辺形のどこかの角を直角拘束にすると、長方形になる。
(長方形は、対面する辺が平行で、コーナーが直角であると定義できる。)

④下の辺を水平拘束すると、縦横が水平垂直な長方形になる。

⑤直線のコーナーを一致拘束でつないで、直角拘束すると長方形になる。

④下の辺を水平拘束すると、縦横が水平垂直な長方形になる。


■三角形を作図する
連続線で三角形を作図する。(連続線は接続部を一致拘束したのと同じ結果になっている。)

① 図が見やすいように、下の辺を水平拘束で水平に移動する。

② 上側の2辺を選択し、等値拘束をクリックすると、二等辺三角形になる。

③ 三角形の辺をすべて選択し、等値拘束をクリックすると、正三角形になる。

④ どこかコーナーを直角拘束すると、直角三角形になる。

⑤ 辺の角度を拘束することもできる。

以上のように、拘束を使うことで形状を制御できる。さらに、水平垂直距離拘束で長さを指定すれば、大きさを固定することができる。

拘束で固定するまでは、線や頂点は自由に移動できるが、拘束するとその規則に合致した方向にしか移動できなくなる。


■拘束と変形
Sketcherの中では、線や点はドラッグで自由に移動できる。拘束をしている場合の変形を
確認しておく。

① 長方形を作図し、縦の辺を垂直距離拘束で固定する。
(長方形は、コーナーが一致拘束、辺が水平垂直拘束になっている。)

② 短辺を横方向にドラッグすると、長さは拘束されていないので水平の長さが伸びる。

③ さらに、上にドラッグすると、縦の長さは拘束されているので図は同じままで、上方向に移動する。

④ 水平距離拘束を追加して固定する。

⑤ 横にドラッグすると、辺の長さは変わらずに図の位置が移動する。

⑥ 上にドラッグすると、辺の長さは変わらずに図の位置が移動する。

このように拘束を使うことで、図形の条件を維持したままでいろいろな形に変形できるようになる。


■Sketcherと外部形状リンク
 Sketcherで作図した図はSketchオブジェクトとなり、いろいろなオブジェクトの下図(プロファイル)になる。下図のSketchを変更することで、オブジェクトの形状を変えることができるので、Sketcherにもどって図形を変形させる。

 さらに、Sketcherには外部形状リンクという機能がある。
これを使うとSketcher以外の形状との間で拘束を作成できるので、外部オブジェクトを変更することでSketchを変更することもできるようになる。
 オブジェクトを変形すると、Sketchをベースにしている他のオブジェクトが連動して変形することが可能になる。

①BIMの作業ビュー3D、作業平面上面で、縦横のグリッドを作図する。

②Sketcherに移動し、外部形状リンクでグリッド線を選択し、赤表示にする。

③長方形を作図し、グリッドとの間で水平垂直距離拘束でグリッドとの関係を固定する。

④BIMに戻り、sketchを壁オブジェクトに変換する。

⑤壁オブジェクトはsketchを基に作成しているので、グリッドの線とは直接関係はないが、線を移動すると壁オブジェクトが連動して変形する。

このように、オブジェクトの変形が別のオブジェクトに連動することが、パラメトリック変形には必要であるので、SketcherはFreeCADの非常に重要な機能である。

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