05.3Sketcherの使い方(1)建具の下図 建具枠

 FreeCADの建具(ドア、ウインドウ)作成ツールは、Sketcherで作成したSketchを下図にして建具モデルを自動で生成することができる。

■Sketcherの特徴
 Sketcherは普通の2次元CADとは少し使い方が違っている。
技術ドキュメントにもSketcherは2次元の作図ツールではないと書いてある。では何かというと、図形に拘束を適用して図形を加工修正するワークベンチというイメージである。
 適当に図形を作図しておいて、線の方向や位置関係、寸法を決めながら形を整えていくツール群である。

 もし、FreeCADで2次元CADの練習をしようと考えているなら、SketcherではなくDraftワークベンチで練習した方がよい。Sketcherをマスターしても普通の2次元CADには応用できない。

 Sketcherのように線と寸法がリンクして、どこかを変更すると自動的に寸法や線が修正される変形(パラメトリック変形)の考え方は初期のCADの頃からあるが、それが一般化しないのは手で作図するのと全く違う考え方が必要だからではないだろうか。
 ただし、BIMソフトでは、壁芯の位置や階高の寸法を変えると、自動的に建物の形状が変わる機能を持っている。そういう意味ではFreeCADでBIMを使う場合にSketcherはBIMと非常に相性のよいワークベンチである。
 Sketcherで作図した下図を基に建具を作れるように、壁芯の位置をSketcherで作図し、それを壁に変換すると、作図したすべての壁を一度に作ることができる。さらに、その壁芯図をSketcherで編集することで、壁位置を移動したり、削除追加することも簡単にできるので、かなり有効なツールである。

拘束という特殊な機能を使っているので、Sketcherで作成したSketchは、オブジェクトとして固まっていて他のワークベンチで編集することはできない。

■Sketcherの拘束について
技術マニュアルから作業に必要なツールと拘束の部分を抜き出した。

トリミングと延長は普通のCADと同じ考え方でよい。
図には入れていないが、作画ツール(線や円弧を作成)もある。

コピーや移動、鏡面コピーのツールもあるが、予想外の変形をすることもあるので、その場合は拘束を解除してから操作する方がよい。

拘束とは、線と線の位置関係、または線の長さ、距離を固定する機能と考えればよい。拘束を適用するとその関係に図形が変形する。さらに、常にその関係性を維持するようになることが重要である。

拘束の特殊なものをいくつか説明する。

一致:2点を選択すると、点(点を含む図形)が移動して2点が同じになるように変形する。
水平(垂直)距離:2点または線を選択すると、2点間の水平(垂直)距離を固定する。
距離:線を選択、2点を選択、点と線を選択すると、実長方向の長さを固定する。
等しい(等値):2つの線を選択すると、2つの線の長さが等しくなるように変形する。
対称:2点+点または線を選択すると、2点が点または線に対し対称になるように変形する。


■建具の下図(Sketch)を作成
建具の下図は壁オブジェクトがなくても作成できるが、建具は壁の中に入れることが前提なので、壁オブジェクトを作成し、その面に建具を作成する。

作業平面を上面、作業ビューを3Dビューにして作業を開始する。
X通り上に壁を作成する(厚さ200 高さ5000)
壁の面を選択し、作業平面を移動する。
ビューを正面ビューに変更する。

扉とランマの枠の形を作図する。寸法は後で指定するので適当でよい。
扉は長方形、900x2200なのでそれに近い形、ランマはドーム型とする。

ランマの円弧を作図する。それぞれの枠は閉じていないと建具ツールで認識されない。
線上にマウスを持って行き線の色が変わったら線上にあるのでクリックして中心とする。
線の端部をスナップで始点を指定、反対の端部をスナップで終点とする。(この時円弧の仮線がスナップ点と離れていても、自動的に調整するので線の端点をスナップすればよい。)

円弧の中心と始点終点をスナップすると自動的に閉じた形になるように変形する。
次に扉の長方形の幅方向を固定するために辺を選択する。
水平距離拘束をクリックして距離を入力すると図が変形する。

枠の高さ方向も同様に辺を選択し、垂直距離拘束をクリックして高さを入力する。

枠の縦横が固定できたので、枠が勝手に動かないように枠の中心を固定する。
対角線の2点を選択し、基準点(0,0)を選択して、対称拘束をクリックすると基準点が中心になるように長方形の位置が移動する。

扉枠の中心と縦横を拘束したので、扉の線を変形することはできなくなり緑表示に変わる。

枠の内側の線を作図する。
扉は長方形で作図する。ランマは枠の外線と同様に直径の線の上に円弧を作成する。

左右の縦枠の幅を水平距離拘束で30に固定する。

ランマの枠幅も水平距離拘束で30に固定する。

縦方向についても同様に垂直距離拘束を使って、上は200、下は0で固定する。

ランマ部分は扉の上辺の線上に円弧を作成したので、外周と円弧の直径がつながっている。
(線の基準になる端点、中心点などが重なっていると、ひとかたまりのWireと判断され、正しく区別されないように見える。)
建具の要素は閉じたWireでないと、正しく認識されないので、つながっている部分を削除する。
トリミングツールをクリックし、マウスで削除する部分をクリックすれば削除できる。

つながっている部分を削除すると、円弧部分が移動できるようになり変形可能となるので、緑表示が消える。
円弧部分が変形しないように、外側円弧を選択しブロック拘束で固定する。

外側円弧を固定するとその他の部分も位置が確定するので、緑表示に戻る。

以上で枠の形状が完成したので、Sketcherを閉じてBIMに戻って形状を確認する。

モデルタブにはSketchができている。
Sketchを選択して、建具作成ツールをクリックすると、ウインドウオブジェクトができる。

Sketchはウインドウに変換され、ウインドウの下層に入るので見えなくなる。
モデルタブを見ると壁とウインドウは同レベルにあり、ウインドウが壁にふくまれていないので、輪郭のみ表示で壁の切抜きができていない。

モデルタブのウインドウを選択し、データタブのHostsの[...]をクリックするとリンクを表示できる。
リンクのリストの中から配置したいオブジェクト(壁)を選択する。

ウインドウが壁の下層に入り、HostsにWall(壁)が登録されたが、作業ビューの図は変わらない。
再描画アイコンが着色表示になっているので、クリックしてビューを更新する。

ビューを更新すると、壁の切抜きができたことがわかる。

Sketchから建具を作る方法は思うように設定できないことが多いので、BIMに戻って確認しながら作業を進める方がやり直しが少ない。

コメント

このブログの人気の投稿

はじめに FreeCADでBIMはできるのか(2022/8/8追記)

オブジェクトを着色する(3) パースのレンダリングに挑戦