入門ガイド1.1 FreeCADの特徴、パラメトリック、ソリッドとは何か

3DCAD初心者のためのFreeCAD-BIM入門ガイド

 このガイドは、3DCAD初心者のためにFreeCADの特徴とBIMモデリングツールの概要を紹介することを目的としています。FreeCADの操作の詳細については、ブログ本編の説明とモデリング練習を読んで実際に操作して確認してください。

 2DCADについてある程度の知識があることを前提にしているので、CADについての一般的な説明は省略することがあります。2Dから3DCAD、さらにBIMへの移行の手掛かりとなることを願っています。

ガイドの構成
  1.  特徴、基本的な設定、機能
  2.  2D作図ツール
  3.  3Dモデリングツール
  4.  BIMモデルの作成
  5.  その他の機能
 ツールの操作を試してみるために、操作ガイドも作成しました。


S.1 FreeCADの特徴と基本的な設定
■FreeCADとは
 FreeCADはオープンソースの汎用パラメトリック3DCADモデラーです。完全に無料で、何かを登録する必要もありません。
 FreeCADは多機能なCADソフトで、使用目的に応じてワークベンチというツール群を使い分けて操作します。最初にインストールした時はスタートというワークベンチなので、ほとんど何も機能がないように見えますが、ワークベンチを切替えることで一般的なほとんどの3DCADの機能とツールを利用することができます。

建築では主にBIMワークベンチを使います。


■パラメトリックモデラー
 FreeCADはパラメトリックモデラーです。パラメトリックとは、パラメーターで形状を変更できることを意味し、モデル作成後に途中の操作の変数を変更して形状を修正することができるということです。

 コンピューターソフトはデータを数値で保存します。(音楽や画像であっても数値に変換して保存します。)CADでデータを作成するということは、何かの計算をしてその答えを記録することです。
 例えば、1+2=3という計算をしたとすると、これまでのCADはその答えの3を保存します。3を4に変更したい場合は、3+1として新しい答え4を保存します。これはダイナミックモデラーといわれる形状そのものを記録するモデリングです。データを見ても、4という答えがどのような操作でできたかを知ることはできません。

 パラメトリックの場合は、1+2という計算式の部分を保存します。4にする場合は、2+2または1+3として4という結果を作ります。この1や2に相当する変数部分がパラメーターで、「+」という操作を含めて保存します。

 FreeCADで形状を操作すると、オブジェクトというデータができます。オブジェクトには作成するために使用したツールの名前が付き、プロパティ(属性)には操作に使用した変数のほか、ツールに対応したパラメーターの項目が含まれます。
 オブジェクトという言葉からは、できた形状を想像するかもしれませんが、作るための操作とプロパティを含めた全体がひとつのオブジェクトです。

 FreeCADの技術ドキュメントにはジオメトリという言葉も出てきます。ジオメトリはモデルを構成する具体的な点、線、面のような要素を指しているように見えますが、モデルを複写するときにジオメトリを複写するということもあるので、境界がはっきりしていません。ただ、ジオメトリというときは、具体的な形状のことを指しており、操作を含めたオブジェクトとは区別しているようです。

 新しい操作を繰り返すと、もとのオブジェクトに重ねて新しいオブジェクトができて、操作の記録が積み上げられていきます。FreeCADでは、データに形状を作成するための操作の履歴が記録されているので、それぞれの操作のパラメーターを変更することで最終形状を修正することができます。



■ソリッドモデルと建築オブジェクト
 FreeCADはソリッドモデルを作成します。ソリッドは中身の詰まった立体で、切断しても中が空洞になることはありません。
体積や重量という物質としての属性を定義できるので、構造計算や部材の重なりをチェックすることができます。

 3Dモデルには、ワイヤーフレーム(線)やサーフェイス(面)で構成されるモデル形式もあります。サーフェイスは曲線や自由曲面に適したモデルです。FreeCADでサーフェイスモデルを作成し、データに混在させることもできますが、建築オブジェクトにするためにはソリッドに変換する必要があります。
 ソリッドは、境界線(Edge)の情報と、立体を構成する面(Face)の情報も含んでいます。

 建築オブジェクト(Archオブジェクト、BIMオブジェクト)は、このソリッドの情報に、部材情報、マテリアルや材料属性を追加し、構造設計や設備設計の情報、コストや仕上げのような付随する属性データを追加できるようにプロパティを定義したものです。

 建築オブジェクトには、壁や柱、窓といった部品の属性があるので、データ上でも最初から柱や壁は別の部品として区別して認識されます。部品別や相互関係のルールを決めることでモデルの作成や変更の修正が容易になります。
例えば、壁はつなげると自動的に結合してひとつの壁にすることができますが、壁と柱、梁は自動的につながることはないというように、部品を判断して適当な処理を行うことができるようになっています。
市販のBIMソフトのRevitなどになると、部品の優先関係を判断して接合部を自動的に処理する機能も備えています。

パラメトリックと建築オブジェクトは、FreeCADでBIMワークベンチを可能にするために絶対に必要な機能です。

コメント

このブログの人気の投稿

はじめに FreeCADでBIMはできるのか(2022/8/8追記)

オブジェクトを着色する(3) パースのレンダリングに挑戦