Tips集【基本操作】コピー(複写)ツールの動作とクローンの使い分け

 移動と複写はCADにおいて最もよく使うツールなので、特に難しい問題はないと考えていたのだが、FreeCADの複写ツールには少し設定に特徴があるので、状況に応じて使い分けないと後でモデルが予想外の変形をすることがある。

 複写ツールはDraftワークベンチでは、移動ツールのオプションとして設定されている。オプションのコピー(P)にチェックを入れるとコピーツールとして機能する。
 BIMワークベンチでは移動と複写ツールに分かれているが、コピーオプションの違いだけで基本的に同じものである。

移動コピー系のツールとしては、他に回転、クローン、Array(配列複写)、ミラーがある。

移動(回転)ツールは、オブジェクトを別のポイントに移動する。位置以外の属性は継承する。

複写(回転複写)ツールは、オブジェクトを別のポイントに複写する。位置以外の属性は継承する。複写により作成したオブジェクトは、もとのオブジェクトとは独立しているので、作成後に変更しても相互に影響することはない。
 以上がマニュアル的な複写の説明であるが、下層にサブオブジェクトがある場合は、少し違う動作をする。
(データの階層構造については別の記事で検討する。)

・複写ツールでは、サブオブジェクトはもとのオブジェクトと同じオブジェクトを複製するので、どちらかのサブオブジェクトを変更すると、両方のオブジェクトに反映する。

・完全に独立したオブジェクトとして複写するためには、コピー&ペーストでオブジェクトを複製してから、移動ツールやPlacementで別のポイントに移動する。
 オブジェクトを選択しCtrl+C(または右クリック+コピー)を押すと、オブジェクト選択の窓が開いて、依存関係のあるすべてのオブジェクトが表示されるのでそのままOKすれば、すべてのオブジェクトの複製が作成される。
 チェックをはずしたものは、もとのオブジェクトと同じものが使われるので、使い分けをすることもできる。

回転ツールも、移動複写ツールと同様の動きをする。

クローンツールは、もとのオブジェクトを複製する。クローンオブジェクトにはサブオブジェクトがなく、Objectsプロパティでもとのオブジェクトを参照している。
もとのオブジェクトの形状を変更すると連動して変更するが、単独で変更することはできない。位置(Placement)とビュータブのプロパティを独立して変更することはできる。

Array(配列複写)ツールを使うと、もとのオブジェクトはArrayオブジェクトの下層に移動する。クローンと同じで、もとのオブジェクトの複製を作成し単独で形状を変更することはできない。位置、ビュータブはArrayのプロパティで変更できる。
(Arrayは建具オブジェクトのマテリアル属性がモデル表示に反映されなくなるバグが報告されている。)

ミラーツールも、Arrayと同じで、もとのオブジェクトを参照する形で複製する。





複写ツールは、サブオブジェクトの複製をコントロールすれば形状を変更しても、想定しない部分で変形が起こることはないが、さらにいくつかの問題がある。

1.グループ単位で複写する場合
 複数のオブジェクトをグループにまとめ、そのグループを選択して複写ツールを使うと、必要のないグループオブジェクトが作成される。

回避方法としては、グループは選択しないでグループ内のオブジェクトだけを選択してコピーすれば、グループの複製はしない。コピー後に新しくグループを作成してその中に移動すればよい。

2.建築オブジェクト(構造オブジェクト)の加算減算ツールで作成したオブジェクトを複写する場合
 建築オブジェクトは加算減算ツールが使用できるが、加算減算ツールで作成したオブジェクトに複写ツールを使うと、モデルタブのデータとビューのモデルが分解する。不要なコピーができたりしてモデルが崩れてしまうので、加算減算ツールで作成したオブジェクトには複写ツールは使えない。
 ブーリアン演算のユニオン、カットツールのオブジェクトはSolidなので、複写ツールは単独のオブジェクトと同じように使うことができる。

3.その他に、データの階層が深くなっていると、予想外のオブジェクトができることがある。Sketchを参照している場合や、コピーするオブジェクトが他のオブジェクトをリンクしている場合などにも想定していないオブジェクトができることがある。
また、最上層のオブジェクトだけを選択する場合と、展開して下層のオブジェクトも含めて選択する場合で複製の方法や、できるオブジェクトの状態にも違いがあるので複写ツールは複雑である。



できるだけ、オブジェクトそのものを選択して複写ツールを使うか、コピー&ペーストで依存関係をみて、必要のないオブジェクトを除外してからペーストと移動ツールで複写するのが間違いが少ない。
毎回コピー&ペーストを使うのは手間なので、実際には複写ツールを使ったときはモデルタブを確認して、必要のないオブジェクトを削除する方が簡単である。

複写ツールとコピー&ペーストが違う働きをするのは、CADソフトではよくあることなので気にはならないが、複写ツールはサブオブジェクトも含めてもとのオブジェクトとは独立していて、コピー&ペーストでサブオブジェクトの複写方法を選択できる方が使いやすいのではないだろうか。

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