08.1BIM壁ツール 使い方(2022/10/6改訂)

 このマニュアルでは、これまでの作業により把握できた各ツールの使い方を整理する。概要は入門ガイドに記載したので、ここではモデリング練習で把握できた各ツールの具体的な使い方についてまとめる。


■壁ツールのオプション
壁ツールを使う前に、オブジェクトを選択していない状態で、壁ツールをクリックして壁のオプションを表示し、パラメーターを設定する。
壁ツールは、この数値を使って壁オブジェクトを作成する。

・壁のプリセットは、今のところ選択候補がないので使用しない。
・作成する壁の幅と高さを設定する。長さは作業ウインドウで指定するか、ベースオブジェクトを使うので入力する必要はない。
・Alignment(配置)は、基準線と壁を作成する位置の関係を決める。Center、Left、Rightから選ぶ。
・続行をONにすると、毎回壁ツールをクリックしなくても壁を続けて作成できる。
・スケッチを使用はONのままでよい。必要な場合には自動的にONになる。
・オプションは変更しない限り設定した数値を保存しているので、毎回設定する必要はない。


■壁ツール
壁ツールは、Wallオブジェクトを最初から作成するか、他の形状ベース(ベースオブジェクト)の上に作成する。
壁オブジェクトは、下層に基になるオブジェクトを含んでいるので、下層のオブジェクトを編集することで、壁の形状を変更することが可能である。


使用法
1. ゼロから壁を描く(スクラッチ)
 ベースオブジェクトなしの場合、作業ウインドウで最初の点と2番目の点をクリックするか、座標を入力する。
オプションで設定した幅、高さ、配置で壁オブジェクトができ、その下層に壁のベースとなるWalltrace(Sketch)ができる。

2. 既存の形状の上に構築する場合、1つまたは複数のベースオブジェクト(線、面などのドラフトオブジェクト、スケッチ、ソリッドも変換可能)を選択し、壁ツールをクリックして壁オブジェクトに変換する。壁オブジェクトの下層に既存の形状が自動的に移動する。
・2次元オブジェクト線形: 長さと形状は既存の線形で決まる。壁厚と高さは設定した値となる。壁ツールはFace(面)とWire(線)を区別するので、閉じたWireの場合、面があればFaceとして、面がなければWireとして壁に変換する。

円と円弧は壁に変換できるが、スプライン曲線のような自由曲線は壁に変換することができない。曲線を壁に変換するには、Extrudeで押出し、3Dオフセットで作成したソリッドを壁に変換する操作が必要となる。この記事の最後に操作方法を記載する。

・Face: 長さと幅(平面形状)は既存の面で決まる。高さは設定した値となる。
・solid: その形状に壁オブジェクトのプロパティを付与する。長さ、幅及び高さは既存の形状のままで、オプションの数値は無効である。

・壁には、加算または減算(ArchAddツールとArchRemoveツール)を使うことができる。
UnionとCutツールと同様の形状を作成するが、加算減算ツールなら壁の属性が残るので、プロパティの変更が可能である。UnionとCutはsolidになり壁のプロパティが消える。

壁ツールはベースオブジェクトをZ軸方向に押し出して壁を作成する。他のツールでは法線方向(面と垂直)が標準であるのに対して、押出しツールのZ軸方向が優先になっている状態である。ただし、作業平面が傾いていると、その作業平面を含むローカル座標のZ軸方向に押出しする。
(プロパティで押出しの方向を指定することはできる。)


壁のプロパティのうちモデリングに関係する項目を整理する。
Base
・Placementはオブジェクトの位置を示す。ベースオブジェクトがある場合は、ベースオブジェクトとの相対距離になる。
・Labelは、オブジェクトの名前。ここで名前を変更することができる。

Blocksの項目は、壁面をブロックに分割するための設定。
・MakeBlocksをtrueにしてブロックの長さ、高さ、目地幅、2段目オフセットを設定することができる。
・ブロックを設定している壁はブーリアン演算や建具の切抜きができないことがある。その場合は、一時的にMakeBlocksをfalseにして操作してからtrueに戻す。

Componentは、オブジェクトの数値情報が自動的に保存されている。他のオブジェクトとのリンク関係を設定することができる。
・軸は、軸システムとのリンクであるが、壁では使わない。
・Baseは、壁を作成すると自動的に設定されるベースオブジェクトである。強制的に変更することもできる。
・Materialは、マテリアルオブジェクトやマルチマテリアルを設定できる。
・Move With Hostをtrueにすると、ホストオブジェクトの移動に伴う自動変形が可能になる。
・Move Baseは、オブジェクトの移動に伴ってベースオブジェクトも移動する設定であるが、falseのままにしておく。

IFCは、BIMデータの共有に関する設定であるが、手動で設定する範囲が不明。

Wallが、壁の形状関係である。
・壁を作成すると、Align(配置)、高さ、長さ、幅が自動的に設定される。この数値を変更することで、壁形状を変更することができる。ここで直接変更できない項目はベースオブジェクトで変更する。
・Normalは壁の押出し方向を指定できる。(0,0,0)に設定すると方向は自動になる。通常はZ=1になっているのでZ軸方向の押出しである。
・Offsetは、AlignをLeftまたはRightにすると基準線からの移動量を設定することができる。
多層壁を作成するときや基準線から離れた位置に壁を作成するときに、オフセットを設定する。

■レベルオブジェクトとのリンク
【壁高さとレベル高さのリンク】
壁オブジェクトがレベルオブジェクトの下層にあり、壁の高さが指定されておらず(0とする)、レベルオブジェクトのHeightプロパティに高さが設定されている(0以外)場合、壁の高さは自動的にレベルの高さ(Height)になる。


【床レベルとのリンク】
壁オブジェクトがレベルオブジェクトの下層にあり、プロパティcomponentのMove With HostがONになっていると、レベルオブジェクトの位置を移動すると、壁オブジェクトも一緒に移動する。Move BaseはONのときは壁のベースラインが壁と一緒に移動し、OFFであれば元の位置に残る。


オプション
【壁の結合】
壁を作成するとき、既存の壁にスナップすると両方の壁が1つに結合される。
 メニューバー編集 >設定 >Arch >全般的な設定タブ >オブジェクトの作成の中に
□壁の自動結合がある。有効になっていると作成した壁は自動で結合する。

1. 幅、高さ、配置が同じで、設定で[ベーススケッチを結合]オプションが有効になっている場合、結果の壁は1つのオブジェクトになる。下図のSketchには、追加したセグメントが追加される。
2. それ以外の場合は、後者の壁が最初の壁の下層に追加される。

結合したくない場合は、[壁の自動結合]と[ベーススケッチを結合]をOFFにする。壁オブジェクトは別々に作成される。

壁を作成するときにベースオブジェクトをまとめて選択し、壁ツールをクリックして変換した場合は、結合の状態は次のようになる。
1.BIM、Draftで描いた線は、まとめて選択しても、結合しない。
  線を集めてUpgradeして、Wireに変換したものは、結合する。
2.連続線(ポリライン)は、結合する。
3.Sketcherで描いた線は、1グループになっているものは、結合する。

壁の自動結合と編集方法については、08.1+2壁ツール 壁を結合する 自動結合のオプションと編集方法にまとめている。


【多層壁】
多層壁はひとつのベースラインの上に複数の壁を構築するもので、壁のレイヤーが独立しているので、レイヤー別に高さやPlacementを設定することができることがメリットである。例えば仕上のボードだけを上に伸ばすようなモデリングができる。
ひとつのベースラインに対して、複数の壁をオフセットで位置を調整するので手間がかかるし、壁オブジェクトの数も増える。

多層壁を作成する方法
①ベースラインを作図する。
②ベースラインを選択し、壁ツールで壁に変換する。
③できた壁の下層のベースラインを選択し、壁ツールで壁に変換する。(必要な階数繰り返す。)
④壁を選択し、AlignプロパティをLeftまたはRightに変更する。Offsetプロパティで壁の位置を調整する。
⑤次の壁を選択し、同様にAlign、Offsetを設定して壁が重ならないように移動する。
(同様の操作を繰り返す。)
Offsetは自由に設定できるので、壁と壁の間に隙間を設けることもできる。


 

【マルチマテリアル】
マルチマテリアルはひとつの壁に対して複数のレイヤーをまとめて割り当てるのでレイヤー別に高さの設定はできないが、マテリアルの構成を変えることで自動的に壁の厚さや構成を変更することができる。しかも壁を結合すると仕上も含めて自動処理ができる。(ただし、マルチマテリアルは壁の結合が複雑になると、正しく表示されない。)
マルチマテリアルは複合壁オブジェクトを作成して、壁のプロパティに設定する必要があるが、壁の配置は一度でよいので、仕上を含む壁はマルチマテリアルを使うと効率的である。


マルチマテリアルオブジェクトを作成する方法
壁のMaterialプロパティを設定するためには、マテリアルオブジェクトを作成しておく必要がある。
ツールバーのArch Material Group.svg マテリアル作成ツールをクリックすると、「建材の品質表示」という窓が開く。
ここは個別のマテリアル情報を設定する画面であるが、今は細かい設定をしないのでそのままOKで閉じると、モデルタブにMaterialsオブジェクトと下層にMaterialができている。
Materialオブジェクトの設定については、別の項目として検討する。


モデルタブにMaterialsがある時に、Arch Material Group.svg マテリアル作成ツールをクリックすると「マテリアルを選択」の窓が開く。下欄の「新しい複合マテリアルを作成」をクリックしてマルチマテリアルの定義に移動する。

ここからは、例として軽量鉄骨スタッドにボード張りの壁を作成してみる。
片面ボード張りとして、名前はStWall-Sとする。
コンポジションは、下の追加をクリックして必要な数のレイヤーを作る。
ここで細かく設定すればよいが、マテリアル属性は無視して仕上げラインを作成したいだけなので、名前は新規のまま変更しない、マテリアルはダブルクリックしてMaterialを選択する。
厚みは材料の厚さを設定する。片面仕上として65、25(下地、ボード)を記入する。

両面ボードの場合も作成する。
マルチマテリアルの名前をStWall-Wとし、コンポジションの厚みを25、65、25とする。

これでマルチマテリアルオブジェクトができるので、壁のMaterialプロパティでマルチマテリアル名を設定する。

・Materialプロパティにマルチマテリアルを設定すると、壁厚に関係なくマルチマテリアルで設定した厚みの方が優先する。

・コンポジションの厚みにマイナスの数値を入力すると、空白のスペースを作成できる。ボードとボードの間を空白にしたければ、マイナスの数値を入れればよい。

・厚さの違う壁に仕上を適用したい場合は、下地部分の厚さを0.0にすれば、壁厚から仕上げを引いた残りの厚さが下地に適用される。











■スプライン(自由曲線)を壁にする。(曲率が大きいとエラーになることがある。)

スプラインで壁のラインを作図し、Extrudeで高さ方向に押出す。
面のオフセットで壁厚を作成するが、BIMワークベンチの3Dオフセットではエラーになる。ので、Partワークベンチに移動してオフセットを試す。

PartワークベンチでExtrudeを選択し、3Dオフセットツールをクリックする。
パラメーターを、オフセット(壁厚)200、モード パイプまたはスキン、複合の種類 円弧または正接とし、オフセットを埋めるをONにして、ビューに正しく表示されたらOK。

Offsetオブジェクトはsolidなので、BIMワークベンチに戻って、Offsetを選択、壁ツールをクリックして壁オブジェクトに変換する。

形状は、壁の下層のOffset、Extrudeのデータタブプロパティで変更できる。


コメント

このブログの人気の投稿

はじめに FreeCADでBIMはできるのか(2022/8/8追記)

オブジェクトを着色する(3) パースのレンダリングに挑戦